国民投票の実施手続市民案

この市民案は、国民投票や法律の専門家を多数擁する本会事務局が作成した素案をベースに、全国各地の賛同者との協議を経て、作成されたものです。
この市民案全てが、採用されるよう務めますが、最終的には国会での審議に基づき法律が確定されることになります。
なお、本市民案作成にあたっての考え方、経緯は、「よくあるQ&A」にまとめてありますので、ご覧下さい。
国民投票が実現した場合の設問(第4次市民案・素案)

原子力発電所の稼動の是非に関する国民投票の
実施手続を定める法律案・大綱
(第4次市民案)

【基本的考え方】
1.本法律案は、日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法・平成19年法律第
 51号)をもとに、任意・諮問型国民投票の一類型として制度設計する。
2.本法律案は、多くの政党の政策責任者が共同して行う議員発議を想定する(できれ
 ば、全会派一致によることが望ましい)。内閣が本法律案を提出することは想定しな
 い。
3.本法律案は、予算を伴う実施手続法として位置付ける。
4.本法律案は、各議院の憲法審査会(国会法第102条の6。法律案審査のための小
 委員会を設けることを想定する)又は特別委員会(同第45条)において審査する。
5.本法律案は、国会審議のさい、国民投票案件に対する選択肢の意義が明確になり、
 各政党の政策実施方針が具体的に示されることとなるよう、法律案発議者の意思が詳
 しく示されなければならない。また、政府は、国民投票案件に関する国民の理解と判
 断に資するよう、分かりやすい答弁と情報提供に努めなければならない。

【本文】
一.意義・目的
  本法律は、二〇一一年三月に発災した東京電力福島第一原子力発電所事故に起因す
 る甚大な被害とその後の国民生活に及んだ重大な影響等に鑑み、わが国の原子力エネ
 ルギー政策に対する国民の意思が将来にわたって国政上適切に反映されることとなる
 よう、原子力発電所の稼働の是非に関して国民投票を実施するため、必要な事項を定
 める。

二.国民投票案件及び選択肢
 1.本法律において国民投票案件とは、原子力発電所の稼働の是非をいう。
 2.国民投票案件に関し、賛成肢(稼働を認める)及び反対肢(稼働を認めない)を
  設ける。
 3.賛成肢に関し、肢A「現在ある原子力発電所に限って、稼働を認める。」及び肢
  B「新規に建設される原子力発電所に関しても稼働を認める。」を設ける。
 4.反対肢に関し、肢C「速やかに(遅くとも半年以内に)、すべての原子力発電所
  を廃止する。」及び肢D「段階的に廃止していき、10年以内にすべての原子力発
  電所を廃止する。」を設ける。
 5.各選択肢に関する投票の方式、投票の効力に関しては、十一.及び十二.を参照。

三.投票資格者
 1.投票資格者は、年齢満18年以上の日本国民、又は年齢満16年以上の日本国民
  及び定住外国人のいずれかとすること(なお、検討を要する)。
 2.投票資格者の登録等に関し、投票人名簿及び在外投票人名簿に関する規定を設け
  る。

四.国民投票期日
 1.国民投票期日は、本法律の施行後速やかに、国会の議決によって、60日以後
  90日以内で定める。
 2.中央選挙管理会は、国民投票期日を速やかに告示するものとする。

五.国民投票広報協議会
 1.国民に対し、国民投票案件に関する広報周知を行うため、本法律の施行後、国会
  に国民投票広報協議会を設ける。
 2.協議会の構成は、衆議院議員10名及び参議院議員10名の、計20名とする。
  協議会委員の数は、各会派の所属議員数に応じて按分し割り当てる。
 3.協議会の定足数は各議院から7名以上とし、表決数は出席議員の3分の2以上と
  する(特別多数決)。
 4.協議会は次に定める事務を行う。
  (1)国民投票公報の原稿の作成
  (2)国民投票案件広報放送(政見放送類似の番組)、国民投票案件広報広告(新
    聞広告、インターネット広告等)に関する事務
  (3)その他、国民投票案件の広報に関する事務
 5.国民投票案件広報放送、国民投票案件広報広告に関しては、賛成肢及び反対肢、
  並びに肢A、肢B、肢C及び肢Dを、公正かつ平等に取り扱わなければならない。
 6.協議会に事務局を設け、参事その他の職員を置く。

六.国民投票公報
 1.国民投票案件に関する国民の理解と判断に供するため、国民投票公報を発行する。
 2.国民投票公報には、次に掲げる内容を記載する。
  (1)国民投票案件及び選択肢の内容
  (2)国民投票案件及び選択肢に対する意見
  (3)国民投票の結果に対する、各政党の政策実施方針
  (4)国民投票案件及び選択肢に関し、国民の理解と判断に資するその他の情報
 3.2(2)及び(3)の掲載に関しては、各選択肢(賛成肢及び反対肢、並びに肢
  A、肢B、肢C及び肢D)、各政党の政策実施方針を、公正かつ平等に取り扱わな
  ければならない。
 4.2(4)の掲載に関しては、その内容を客観的かつ中立的に掲載しなければなら
  ない。
 5.国民投票公報は、国民投票期日の10日前までに、すべての有権者に配付する。

七.国民投票運動の意義
 1.本法律において国民投票運動とは、国民投票案件に対する選択肢の投票をし、又
  はしないよう勧誘する行為をいう。
 2.本法律の解釈、運用にあたっては、国民投票運動、国民投票案件に対する意見の
  表明が不当に制約されることにならないよう、とくに留意しなければならない。

八.国民投票運動の規制(罰則)
 1.国民投票運動に対する規制(罰則)は、国民投票の公正を確保するために必要最
  小限のものとする。
 2.投票事務関係者の国民投票運動規制
   投票管理者、開票管理者、国民投票分会長及び国民投票長は、その在職中、関係
  区域内で国民投票運動をすることができない。
 3.特定公務員の国民投票運動規制
   中央選挙管理会の委員、中央選挙管理会の庶務に従事する総務省の職員、選挙管
  理委員会の委員及び職員、国民投票広報協議会事務局の職員は、その在職中、国民
  投票運動をすることができない。
  ※裁判官、検察官、会計検査官、公安委員会の委員、警察官、収税官吏及び徴税の
  吏員は、国民投票運動をすることができる(公職選挙とは異なる)。
 4.公務員・教育者の国民投票運動規制
  (1)公務員・教育者の国民投票運動は、その地位を利用した態様に限り規制する。
    違反行為に対しては、罰則は設けない。
  (2)公務員の政治的行為の制限に関して定める国家公務員法(人事院規則)、地
    方公務員法等の適用を全面除外する。
 5.国民投票運動のための広告放送の規制
   何人も、国民投票期日より14日以内は、国民投票運動のための広告放送(スポ
  ットCM)をすることができない。違反行為に対しては、罰則は設けない。
 6.買収・利害誘導罪
   組織的多数人買収罪、利害誘導罪、買収目的交付罪を設ける。
 7.投票の自由・平穏を害する罪
   職権濫用による国民投票の自由妨害罪、投票の秘密侵害罪、投票干渉罪、投票箱
  開被罪、投票管理関係者・施設等に対する暴行罪等、多衆による国民投票妨害罪、
  投票所・開票所・国民投票会場等における凶器携帯罪を設ける。
 8.投票手続に関する罪
   詐偽登録罪、虚偽宣言罪、詐偽投票罪、投票偽造・増減罪、代理投票等における
  記載義務違反、立会人の義務を怠る罪を設ける。

九.投票及び開票
 1.投票は、一人一票とし、秘密投票とする。
 2.投票人は、国民投票の期日に、投票所において投票しなければならない。
 3.期日前投票、不在者投票、在外投票の手続に関して、必要な規定を設ける。
 4.投票管理者、開票管理者、国民投票分会、国民投票会に関して、必要な規定を設
  ける。

十.投票用紙
 1.投票用紙は、投票人に対して、国民投票の期日に、投票所において交付する。
 2.投票用紙には、国民投票案件に対する賛成肢又は反対肢のいずれかを選択し、か
  つ肢A、肢B、肢C又は肢Dのいずれかを選択し、○の記号を付けるための欄を予
  め印刷しなければならない。
 3.投票用紙の様式は、別に定める。

十一.投票の方式
 1.投票人は、国民投票案件に関し、賛成肢又は反対肢のいずれかに○の記号を付さ
  なければならない。
2.投票人は、賛成肢に○の記号を付した場合には、肢A又は肢Bのいずれかを選択し、
  ○の記号を付さなければならない。
 3.投票人は、反対肢に○の記号を付した場合には、肢C又は肢Dのいずれかを選択
  し、○の記号を付さなければならない。
 4.代理投票、点字投票に関して、必要な規定を設ける。

十二.投票の効力
 1.賛成肢に○の記号を記載し、肢A又は肢Bに対する投票が明らかでないときは、
  賛成肢に対する投票としてのみ扱う。反対肢に○の記号を記載し、肢C又は肢
  Dに対する投票が明らかでないときは、反対肢に対する投票としてのみ扱う。
 2.賛成肢に何の記載もせず、肢A又は肢Bのいずれかに○の記号を記載したときは、
  賛成肢の投票としても扱う。反対肢に何の記載もせず、肢C又は肢Dのいずれかに
  ○の記号を記載したときは、反対肢の投票としても扱う。
 3.次に掲げる投票は、無効とする。
  (1)賛成肢及び反対肢の両方に○の記号を記載したもの
  (2)肢A、肢B、肢C及び肢Dに対し、二以上の○の記号を記載したもの
  (3)賛成肢及び肢C、賛成肢及び肢D、反対肢及び肢A又は反対肢及び肢Bに○
    の記号を記載したもの
  (4)他事を記載したもの
  (5)何も記載がないもの
 4.3.に関わらず、投票の効力の決定にあたっては、投票人の意思を合理的に解釈
  し、できるだけ有効とみなすよう努めなければならない。

十三.国民投票の結果
 1.中央選挙管理会は、国民投票の結果を速やかに告示するものとする。
 2.投票の結果、賛成肢に対する投票又は反対肢に対する投票のいずれか多いほうの
  うち、相対的に多数となる肢(AないしD)について、国はその内容を尊重しなけ
  ればならない。

十四.その他
   施行日その他必要な規定を設けるとともに、必要な事項に関しては政令で定める。

2012年7月13日