ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第7回) by しばけん
ブルガリアの全国民に問いかけられた「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」という質問。最終的な投票率はまだ出ていないが1月27日の時点では、投票率は21.8%。そのうち賛成派が61%、反対が39%となった。拘束力を持つ60%(前回総選挙の投票者数)には程遠く及ばなかった。ただ、過半数が賛成し投票率が20%を超えた場合、国会での再審議が必要で、去年3月に政府が中止を決定したベレネ原発建設計画についてもう一度、国会で議論されることが見込まれる。その場合政府は3ヶ月以内に結果を出さなければならない。
ブルガリアの欧州における発展のための市民(GERB)のボリソフ首相は、20%強の投票率に注目。民衆の関心は低く、結論は国会に任されたと判断し、再審議では「ベレネ原発建設計画に反対する」と述べた。そして経済担当大臣のデリャン・ドブレフは「当然、すでに原発のあるコズロデュイに7つ目の原子炉を作るつもりだ。」と答えた。
一方、野党の社会党(BSP)は投票率よりも、過半数の賛成意見に焦点を当てて「負けたのは首相」と強調。党首のセルガイ・シュタニエフは「この結果を歓迎する。そして賛成に投票した人にも、反対に投票した人にも感謝したい。ブルガリア人は積極的な選択をした。これで未来の子供達は技術を身につけて働くことができるだろう。この国民投票の成功は、新しい市民社会の幕開けである。」ついで「この低い投票率についてどう思いますか」と聞かれると「今の首相のボイコも前にソフィアの市長になる時、100万人の有権者に対して、20万人の投票であった。そしてGERBの議員120人より、国民投票に投票した150万人の方が多い。(だから議員の決定ではなく、国民投票の結果を尊重するべき)」と答えた。
原発反対派はこの結果を悔やんでばかりではない。「5年前、ブルガリアの反原発はたった10%であったが、少しずつ反対派が増え、今回は39%にまで達している。原発推進40年の洗脳が少しずつ解け始めている。」と希望を失っていない。
地域間の差は顕著だ。都市部ほど原発賛成の人が少ない。首都ソフィアではなんと賛成が49.8%で過半数を割っている。他の都市部でも賛成が57%で平均より低い。一方、小さな町や村では67.7%が賛成していてベレネのあるプレヴェン州はさらに高く77.5%にものぼっている。
さらに、年齢別で見てみると、18歳から30歳は賛成が53.6%。31歳から50歳までが51.5%。51歳以上は66.2%となっている。51歳以上が他の世代より10ポイント以上高いのは、ソ連時代からの社会党(BSP)支持者が多く、伝統的に原子力推進政策が進められてきた世代のためという見方もある。
では投票に行かなかった大多数の約8割の人が何を考えていたのか。一番の理由は「どっちに投票しても原発政策は進められるから。」上記のような与野党の攻防は今に始まったわけではなく、ブルガリア人はこのような政争に辟易しているのだ。また質問があいまいなので、国民投票の結果を政治家の解釈によって都合よく使われてしまうのを恐れたという人も多い。
最終回「無効?不成立?リトアニア国民投票との比較」
プロフィール
大芝健太郎 しばけん
26歳 フリーライター
「原発」国民投票賛同人
「原発」国民投票 調査団のメンバーとして
リトアニア国民投票も現地取材
月刊「社会運動」連載中
雑誌「NOU LIFE STYLE」他
Blog: http://shibaken612.blogspot.com
Twitter: https://twitter.com/shibaken612
2013年1月29日 | コメント/トラックバック(0) |
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