あらためて問う「みんなで決める」ことの意義 – 東日本大震災・原発事故から10年を迎えて

「みんなで決める」2つの要素

東日本大震災から10年が経過しました。

福島第一原発の事故を契機に設立された市民グループ<みんなで決めよう「原発」国民投票>もまた、設立10年を迎えようとしています。短期決戦の、いわば「プロジェクト」としてスタートした当会ですが、長期戦へと移行しています。

私たちの会の考えは、設立当初から変わっていません。会の名前にも「みんなで決めよう」とありますが、私たちが求めているのは、「みんなで決めること」です。あれだけの大きな事故があったのだから、政治家や官僚に決めてもらうのではなく、原発政策の行く末を国民が自分たちで決められてしかるべきではないか。大事なことを直接投票でみんなで決められることは、民主主義国家の主権者として、私たちが持っている権利ではないのか。

この「みんなで決めること」には、2つの大切な要素があります。1つは、国民や住民が、一人一票で投票し、「多数決をとること」です。国民投票や住民投票について考えるとき、この多数決の要素を思い浮かべる人も多いかと思います。もう1つは、「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」ことです。「多数決をとること」は、国民投票や住民投票には必ず付随するものであり、そこに質的な差は原則的にはありません。そのため、一つ一つの国民投票・住民投票の良し悪しは、「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」の質次第になります。

多数決=「みんなで決める」ではない

「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」がなぜ大切なのか、身近な問題で考えてみましょう。5人家族で、海外旅行の行き先を決めようとしているとします。お母さんは、ハワイに行きたいと主張しました。ところがお父さんは、アゼルバイジャンに行きたいと言い出しました。何も議論をせずに多数決をとったところ、3人の子供のうちの1人がハワイに投票し、2人がアゼルバイジャンに投票しました。結果、アゼルバイジャンに行くことになってしまいそうです。お母さんは納得できません。というのも、前からハワイに行こうという話は出ていたものの、アゼルバイジャンの話は一度もしたことがありませんでした。お母さんは、子供たちに尋ねました。「あんたたち、アゼルバイジャンって知ってるの?」。子供たちは、一人もアゼルバイジャンのことを知りませんでした。

多数決をとるのはいいことでしょう。お父さんが独断で決めるよりは、ずっとましです。しかし、みんなが納得できる行き先を決定するためには、多数決を取る前に、情報を洗い出して、話し合いをする必要があります。ハワイには何があり、アゼルバイジャンには何があるのか?お金はどれだけかかるのか?危険ではないのか?そもそも子供たちは実は別の場所に行きたいのではないのか?などです。原発・エネルギー政策も、同じことです。それぞれの電源にはどんな特徴があるのか?コストはどう違うのか?事故のリスクは許容できるものなのか?経済への影響はどうなのか?など、話し合うべきことはたくさんあります。

「みんなで決める」ための議論はされてきたのか

大事なことではあるものの、この10年で突きつけられたのは、「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」の難しさだったような気がします。

議会制民主主義に目をやると、福島第一原発のメルトダウンの後、2011年の東京都と大阪市に始まり、静岡県、新潟県、埼玉県、八幡浜市、宮城県、そして昨年の茨城県と、原発住民投票を求める直接請求運動が行われてきました。その過程で見えてきたのは、地方議会における審議がお粗末で、いかに「議会」が「議論をする会」になっていないか、ということでした。

また、国会でも原発問題が果してどれだけ議論されてきたでしょうか? 政府は発電に占める原発の比率を高める目標を掲げているものの、世論調査の結果を見る限りでは、国民はそれに納得はしていないようです。そのギャップが一貫して埋まらないことは、議論が尽くされていないことの証左ではないでしょうか。

また、私たちの会としても、原発賛否を考える公開討論会やワークショップを何度か実施してきたものの、どうしても険悪な対決の場になってしまいがちで、特に原発問題を「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」の難しさは身をもって感じてきました。

しかしその難しさが、「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」の意義を低減させることはありません。いや、むしろ難しいからこそ、それを実施できたときの意義は大きいものとなります。

反対と推進の間で取り残された「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」

10年が経ち、反原発を強く求め続けてきた人の中には、「今さら議論しても無駄だ」と思っている人もいるでしょう。そういう人たちは、原発の議論などせずに、とにかく政権打倒を目指すことが一番だと主張するかもしれません。原発推進派の人には「政府は推進なのだから、議論しない方が得だ」と思っている人もいるかもしれません。どちらも、「多数決をとること」、またはそのために「多数を獲ること」が全てだと思っているのではないでしょうか。その考えは、間違っています。なぜならその方法では「反原発を強く求め続けてきた人」でも「原発推進派」でもない、大多数の国民が納得しないまま取り残されてしまうからです。「選挙では主な争点にならなかったし、国民的な話し合いもされていないけれど、選挙に勝ったから脱原発が実現される」となったとして、それは果たして私たちが望むような民主主義を体現しているでしょうか?

原発問題について、たしかに賛成、反対のそれぞれの主張はこれまでに明らかにされています。しかし、そのことと「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」は全く別のことです。いってみれば、これまで行われてきたのは、少し挑戦的な言い方に聞こえるかもしれませんが、大いなる自戒を込めてあえて書くならば、「一部の人によるすれ違い」にすぎなかったのではないでしょうか。

変化してきた市民の意識と新しい民主主義の潮流

この10年の間に、「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」に向けて、ポジティブな変化もみられています。たとえば、SNSで話題になったことが大手メディアに取り上げられ、政府の政策変更に繋がっていくことも珍しくなくなりました。日本では、原発反対派による官邸前デモが一つのきっかけとなり、デモやパレードによる政治的なアピールが特別なものではなくなりました。また世界中で、特に気候危機問題をめぐり、市民会議という熟議の場が設定されることが当たり前になってきました。日本は世界から後れを取っているものの、インターネット上の署名による提案や市民による決定を公式な仕組みに取りいれている政府や自治体も、珍しくありません。

フェイクニュースの蔓延や政府による統制強化といった危うい側面が浮かびあがってきたことも、事実です。一方で、市民による熟議や積極的な参加を求める、新しい民主主義の潮流が私たちの前に姿を現してきているのです。ポジティブな変化を意識的に捉えて、そこを強化してことが大切です。

大事なことは「みんなで決めよう」

市民グループ<みんなで決めよう「原発」国民投票>は、「原発」国民投票・住民投票を求める活動の中で「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」を推進していきます。簡単なことでないことは、10年間の経験から分かっています。それでも、挑戦していきたいと思います。

「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」は、直接民主主義だけでなく、間接民主主義にとっても大切なことです。もっと言えば、旅行の行き先を決めるといった、日々の暮らしの中でも大切なことです。多くの人が「みんなで考えて、みんなで話し合うこと」が素敵なことであると考え、原発やエネルギー政策の是非を「みんなで決めたい」と強く願うようになり、そしてそれが可能だと信じられた暁には、きっと「原発」国民投票は実現していて、また私たちの政治も社会も、より良い方向へと進んでいけるのではないかと信じています。

2021年03月11日
みんなで決めよう「原発」国民投票
運営委員長 鹿野 隆行

2021年3月11日 | コメント/トラックバック(0) |

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2020年度拡大運営委員会のご報告

10月4日(日)、オンライン(ZOOM使用)とリアル会場を併用して、みんなで決めよう「原発」国民投票の2020年度の拡大運営委員会を開催しました。

2020年度の活動方針として、(1)鳥取の住民投票運動を支援すること、(2)総選挙時に立候補者への公開質問状を出すこと、(3)福島第一原発の事故および当会設立から10年を迎えるにあたりそれにふさわしい活動を行うことなどが確認されました。

下記に、報告・採択された文書および議事録を掲載いたします。
*リンクをクリックするとPDFファイルが開きます。

会報「ミント(MINT)」第13号発行のお知らせ(1月30日)

みんなで決めよう「原発」公民投票の会員の皆様に、当会の活動などについて掲載した会報「ミント(MINT)」第13号を2020年1月30日に発送しました。

今号では、いばらき原発県民投票運動について特集したほか、総会および総会に付随するイベントの方向をしています。また、静岡県御前崎市、神奈川県横浜市、鳥取県境港市・米子市の住民投票関連の動きについて掲載しています。

どなたにもご覧いただけるようPDFファイルを掲載しました。ぜひ、ご一読ください。また、ご意見・ご感想をお寄せいただけると幸いです。

目次は次のとおりになります。

<以下、前半PDF記載>
・スタート!いばらき原発県民投票 いよいよ直接請求へ
・ 2019年度総会とイベントの報告
<以下、後半PDF掲載>
・みんなで住民投票!(みんじゅう)
大阪市廃止・特別区設置住民投票に外国籍住民の投票権を求めて
・御前崎市での直接請求運動
 圧倒的な署名数が議会を変えて住民投票を実現させた!
・カジノ誘致をめぐる横浜市民の動き
 日本の民主主義運動の金字塔になるか?
・鳥取県で「原発」住民投票を目指す動き
・イベント案内(2月15日・関西)

2020年9月8日 | コメント/トラックバック(0) |

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緊急共同声明:いばらき原発県民投票条例案は継続審議とすべきである

東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例案が6月23日の茨城県議会本会議で採択される予定ですが、これは継続審議とし、議論を深めていくべきだと考えます。

いばらき原発県民投票の会は6月22日(月)、全茨城県議宛に、継続審議を要望する文書を送付し、その文書をWebサイトに公開しました。また、「連合審査会における反対意見表明に対する指摘事項」を作成し、これも会のWebサイトに掲載しています。

(参考)いばらき原発県民投票の会Webサイトより
「継続審議の要望書」および「意見表明への所感」を公開しました

「連合審査会における反対意見表明に対する指摘事項」に詳しく記載があるように、18日に開催された連合審査会で採決直前に行われた反対意見表明では、条例案や住民投票全般に対する明らかな事実誤認や論理矛盾がいくつも見られました。また、反対意見表明には、参考人として呼ばれた有識者や請求代表者の発言を踏まえない箇所もいくつもありました。

1日だけというスピード委員会審議で、採決の決定前に論点を整理して議論を深めることは、どだい不可能だったのです。連合審査会で県議は口々に請求者への敬意を語りましたが、2か月間に及ぶ署名収集を経て直接請求がされ、提出がされた条例案に対して、たった1日しか委員会審議を行わないという態度は、到底86,703名の請求者に対し、敬意を払っているものとは思えません。

いばらき原発県民投票の会は「話そう 選ぼう いばらきの未来」という標語を掲げ、これまで活動を続けてきました。一方、県議のみなさんは「話そう」の専門家として、有権者から議席を託されていることと思います。条例案審議の段階でその「話そう」の思いが踏みにじられることは、あってはなりません。

いばらき県議会各会派・県議は、23日の本会議で条例案の採決をすることなく、継続審査とすることを主張していただきたい。

2020年6月22日
〇 みんなで決めよう「原発」国民投票  運営委員会
〇原発県民投票静岡2020 代表・中村英一
〇女川原発再稼働の是非をみんなで決める県民投票を実現する会
  代表・多々良哲
〇原発都民投票 請求代表者・高田恵理

いばらき原発県民投票:本会議意見陳述

2020年6月8日(月)、いばらき県議会本会議が開催され、大井川知事が地方自治法の規定に基づき知事意見を添えて、「東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例(案) 」(以下、県民投票条例案)を議会に提出しました。 また、いばらき原発県民投票の会の徳田太郎共同代表が同本会議で意見陳述を行いました。

知事意見

大井川知事は、議場で各種議案を説明する際に県民投票条例案について一言も発言しませんでした。知事の見解を知事自身の言葉で聞くことができなかったことは、残念でなりません。茨城県のWebサイト上に知事意見がPDF文書で掲載されており知事意見の全文がご覧いただけますが、「慎重に検討していく必要がある」とすると共に「執行上の課題」を指摘するだけで、賛否を明確にしないどころかほとんど意見を示さない内容でした。下記に、意味のある部分を抜粋します。

意見陳述

同本会議では、 8万6703人の署名者を代表して、いばらき原発県民投票の会の徳田太郎共同代表が20分間にわたり、意見陳述を行いました。

いばらき原発県民投票の会のWebサイトで「請求代表者の意見陳述(全文)」の原稿をご覧いただけますが、下記の動画をぜひ見ていただきたいと思います。

意見陳述の中では、(1)「住民投票は二元的代表制を否定するものである」 、(2) 「複雑かつ高度な問題は住民投票にはなじまない」 、(3) 「住民投票の実施には多額の費用がかかる」 という3つの論点について、それぞれ反駁するにとどまらず、それを県民投票をすべき理由へと見事に昇華させています。詳細はここでは説明しませんので、ぜひ上記の動画または原稿をご覧ください。

また、知事意見で指摘が入った点についても、「 知事のご意見には、執行上の課題に関するご指摘もございました。条例案第3条および第19条に規定しております通り、開票事務の主体は知事とし、第17条における『開票を行い』の5字を削除することにより、条文間の矛盾は解消できるものと思われます。この点につきましては、ぜひ修正案をご議論いただければと存じます。 」と反論をしています。

意見陳述が終了すると、傍聴席ではなく多数の県議から拍手が沸き起こりました。これは、県民投票の会がこれまで丁寧に県議に説明を重ねてきて、多くの県議と信頼関係を築いてきたからこそでしょう。

次の山場は、6月18日(木)に予定されている、 防災環境産業委員会と総務企画委員会による連合審査会です。ここで、1. 執行部説明聴取・質疑、2.参考人意見聴取・質疑、3.質疑・会派ごとの討論、4.委員会採決が執り行われます。2の参考人としては、大学教授、資源エネルギー庁職員、原子力規制庁職員、関係自治体の長とともに、請求代表者3人が質疑応答に臨みます。

この連合審査会の模様も、本会議同様インターネット中継がある予定です。 また、いばらき原発県民投票の会でも中継の前後にZoom等を使用したオンラインイベントを企画しています。引き続き、注目していきましょう。

(運営委員長・鹿野)

【2/15イベント報告】 兵庫県西宮市にて”じっさいどうなん?「放射能測定マップ」読み解き講座in西宮

「みんなのデータサイト」の中村さん

2/15に、兵庫県西宮市にて”じっさいどうなん?「放射能測定マップ」読み解き講座in西宮 〜みんなのデータサイトさんと過去・現在・未来を考える〜”を開催しました。
https://facebook.com/events/s/833336617089150/

みんなのデータサイト」の中村さんからは、まず最初に福島県伊達市に住んでいる方が、福島原発事故当時のことを語った裁判の意見陳述書の一部を読み上げ、紹介されました。

その中には、何も知らなかった、知っていれば無用な被曝をしなかったかもしれない、という切実な思いが綴られていました。

その後、マップ集を作るまでのいきさつや、本の中身について、ギュギュッとまとめて紹介していただきました。

全国で31箇所の市民測定所ボランティアの方々が、東日本の食べものや土壌を採取し、ひとつひとつ積み重ねたデータがまとめられているこの資料集は、歴史に残る貴重なものだと改めて感じました。

また、書籍にしてISDNコードをつけると、国会図書館に必ず2冊収められることになっているそうで、空から測定したデータをまとめただけの国のデータよりも、土壌の測定値を積み重ねた市民の信頼できるデータを、事実としてしっかり後世に残していくために、書籍化という選択肢も市民活動を記録していく上で、大切だと感じました。

   阪神測定所の影山さん

中村さんから東日本についてお話いただいた後は、会場の近くにある阪神測定所の影山さんから、西宮で測定してきた内容について紹介していただきました。

福井県若狭湾岸にあるたくさんの原発が事故を起こせば、関西でも同じように影響はある。東日本で起きていることを、自分ごとに引きつけて聞くことができました。

また、西日本で手に入る食材や土壌でも、Cs137は検出されることがあり、それは福島原発事故以前の大気圏核実験による放射能が、今も残っているのだ、ということもわかりました。(Cs137の半減期は30年だから、核実験以来2回しか半減期は来てなくて、1/4になっただけで消えてない)

そして、オプショナルツアーの測定所訪問へ!

   阪神測定所の測定器

会場のあんのん舘から歩いて向かい、小さな路地の奥にある測定所さんへおじゃましました。

測定器は鉛でできた機体で、蓋を動かすのも重たく、外部からの自然放射能の影響による測定値のブレを避けるために、水を入れたペットボトルで覆われていました。

測定には1Lのサンプルが必要で、開始から12時間後に結果が出るそう。

とても有意義な時間で、初めて測定所を訪問した私は(きっと参加者のみなさんも)興味津々でした!

企画して良かったです^_^

参加してくださったみなさん、ありがとうございました!

(関西運営委員:本村)

☆みんなのデータサイトさんHP
https://minnanods.net/

いばらき原発県民投票 最初の週末のレポート!

<水戸駅前での署名活動>

1月6日(月)、市民グループ「いばらき原発県民投票の会」(以下、「県民投票の会」)が茨城県庁で大井川知事から「請求代表者証明書」の交付を受け、「東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例」(条例案PDF)を直接請求するための署名期間がスタートした。

署名期間は2か月間。ほとんどの自治体では3月6日が最終日となるが、選挙があるため中断したり開始が遅れたりする地域があるので、全44市町村で署名期間が終了するのは4月中旬になる。そして、5月25日に条例制定の本請求を行い、6月議会で条例案が審議されることを想定している。

直接請求を実施するために必要な法定署名数は有権者の2%、茨城県の場合は約4万9千筆だが、県民投票の会としては県議会で条例案を通すために政治家にプレッシャーをかけ「説得力のある直接請求」(共同代表・徳田さん)にするためにも、2%を超えて一筆でも多くの署名を集めることを目標に掲げている。

県民投票の会は署名集め開始までに、県内の39市町村で合計71回の「県民投票カフェ」と呼ばれる対話会を実施した。また、事前に集まった受任者(予定者)の数は3500人だ。私たちの会が実施または強く関与した東京、大阪、静岡、新潟などの過去の例と比較しても、入念な準備が重ねられたと言っていいだろう。

請求代表者には3人が就任した。県民投票の会の共同代表を務める鵜沢恵一さん(ひたちなか市在住)、姜咲知子さん(石岡市在住)、徳田太郎さん(つくば市在住)の3人がそのまま請求代表者となった。

署名方法の説明

水戸の会場で説明をする徳田共同代表

署名期間が始まってから最初の週末となる1月11日、12日、13日の三連休には、県内16地域で署名説明会が開かれ、同時に街頭署名も行われた。いわば、地域別のキックオフだ。そのうち、11日の土浦と12日の水戸の説明会に参加してみた。

土浦と水戸の説明会の両方で、まずは共同代表の徳田さんが直接請求の説明や署名集めの注意点について話をした。本業がファシリテーションだけあって、人前で話すのはお手の物。いつもの通り、冗談も交えながら、分かりやすく、そして淀みなく説明を進めていた。

参加者には「受任者セット」と呼ばれるものが配られ、これには手紙、署名マニュアル(クリックするとPDFファイルが開きます)、署名簿、返信用封筒、払い込み用紙の5点が含まれていた。このうち、徳田さんは署名簿を使って説明を行った。(なお、ここでは説明の詳細は割愛するので、その内容を知りたい方は動画「県民投票・署名簿が届いたら?」を見てほしい。また、コント形式の動画「県民投票 署名集め大丈夫?編 ☆注意点をコントで解説、徳田太郎と にゃーこ と ぴーこ」も分かりやすい。)

受任者セットに含まれる署名簿には、5筆の署名欄がある。面白いのは、徳田さんの言葉を借りれば「わたし、ちょっと頑張っちゃおうかなぁ」という人向けに、45筆版の署名簿も用意されていることだ。5筆版しかなければ、たくさん署名を集める人は何度も委任欄に委任状の情報を書かなければならず、手間がかかる。一方、45筆版しかなければ「こんなにたくさん集めなければならないのか」とプレッシャーを感じてしまい、受任者になるのをためらう人もいるかもしれない。また、45筆版があることで請求の要旨などのページを印刷する枚数が省け、印刷コストという点でも利点があるだろう。

署名簿返信用の封筒は料金受取人払いとなっているため、切手を貼らなくても県民投票の会の事務所にそのまま送付することができる。しかし徳田さんは「料金受取人払いなので、後で会の支出が凄いことになります。もしも、切手を貼ってやろうという方がいらっしゃいましたら、大変ありがたい」と、切手を貼ることで「活動費の支援」を行うことをお願いした。直接請求の活動では、印刷費と同様、郵送費に多大な資金が必要になり、切手代はバカにならない。

会場からの質問が集中したのが、署名の細かなルールについてだ。せっかく集めた署名が審査で無効と判断されてしまってはたまらないという、受任者の必死さが伝わってくる。県民投票の会では、署名集めの開始に先立って県内44市町村の選挙管理委員会に署名の有効・無効の判断についてルールの確認をした。しかし、選管によって回答が違うことがあったという。たとえば、記入を間違って二本線を引いて訂正する場合、「訂正印は不要」という選管と「訂正印が望ましい」という選管があった。県民投票の会は、各選挙管理委員会から集めた情報を総合的に勘案した上で、間違いがない方法として自ら署名集めのルールを定義したという。

本来であれば、直接請求は地方自治法に基づく全国で行われうる活動であるのだから、署名の細かなルールにも全国的な統一性があってしかるべきだと思う。管轄する総務省から何らかのガイドラインが出されるのが望ましいのではないだろうか。それがないにしても、せめて都道府県の選挙管理委員会が総括して、県内市町村の選挙管理委員会によって差異がでないように調整すべきではないかと思わされた。

県民投票の会は、署名簿返却の集約日を二日設定した。1月24日を一次集約日、2月14日を二次集約日としたのだ。直接請求の署名集めでよくあるのが、終盤まで署名集めの進捗が把握しづらいことだ。一般的に受任者は署名簿をため込んで、署名期間のギリギリにまとめて送付する傾向がある。複数回送付するのに比べて手間がかからないし、郵送費も節約できるのだから当然のことだろう。会ではそれを見越して、徳田さんも「できるだけ小出しに」送付してもらえるようお願いしていた。一次集約日までに集まった署名数は、2月4日に発表される予定だ。この数字は、メディアからも注目を集めることだろう。

土浦での作戦会議

<小グループでの作戦会議

茨城県は広く、中央集権的に事務局がすべてを管理するのは不可能だ。県民投票の会では、市町村別に「世話人」と呼ばれる人を置き、その人を中心に市町村の署名集めを推進している。

土浦市では、小野村さんという方が世話人を務める。署名説明会の後半は、徳田さんからバトンタッチされ小野村さんのリードで進められた。各地の世話人によって準備の仕方や進め方は様々だったようなので、以下は一つの地域の例として捉えてほしい。

まず、土浦市全体を対象とした次の受任者交流会の日程が決定された。2月11日に県民投票の会が主催して水戸市内で中間報告イベントが予定されているものの、水戸市民を除けばそこまで足を運べる受任者は一部に限られるだろう。地域で全体会議を行い、進捗を確認し、ベストプラクティスを共有し、そして更なる作戦を練ることが極めて重要になってくる。

投影されたDVDの一コマ

小野村さんは次に、原発都民投票の会が作成したDVDの一部の映像を紹介して、署名集め用のバインダーキットや署名の集め方についての過去の例を示した。バインダーの実物を裏返してみせ、裏側に朱肉とティッシュが貼り付けられていることを説明すると、会場から感心する声が聞こえた。小野村さんは、参加者全員に配れるように事前にバインダーキットを用意しており(ただし、受任者が好きなようにアレンジできるように未組み立て)、説明会が終わってから土浦駅前で行われた署名活動では、受任者一人一人がマイ・バインダーを手にして署名活動に向かうことができた。

その後、参加者が地域別の小グループに分けられ、作戦会議がスタートした。 各グループに配られた白地図を見ながら、どこでどのように署名を集めれば効果的かが話し合われた。特に今後数回の活動を決めるのは重要だ。効率的に戸別訪問ができる団地や、署名スポットにできそうなスーパーなどの情報は小野村さんから提供されていた。隣の阿見町からも受任者が何人か参加しており、土浦市と阿見町の両方の市民が利用する駅で街頭署名活動をする際には、二つグループが共同して活動することなども確認された。

<土浦駅前での署名活動>

説明会の終了後、いよいよ土浦駅前デッキでの署名活動が始まった。少し緊張していそうな人もいた。もしかしたら、署名集めをするのが人生で初めての人もいたかもしれない。そこが、原発住民投票運動のいいところだ。市民運動をライフワークにしているような人も頼もしい限りだが、そうではない多様な人たちが参加するからこそ、この運動は面白いし、大きなムーブメントに発展させられる可能性を持っていると思う。

私も道行く人に声をかけながら、県民投票のチラシを配布した。受け取ってくれた人には署名をしてくださいとお願いして、OKがでれば受任者を呼んで署名をしてもらう。迷っている人には「地方自治法に基づいた正式な署名です。有権者の2%の署名を集めると必ず議会に県民投票の条例案を提出できるんです」とプッシュすると、何人かが署名に応じてくれた。街頭署名では、伝える内容もさることながら、一生懸命話して熱意を伝えることも大切だと思う。

署名をしてくれた人には、「一筆でも構わないので、ご家族やご友人から署名を集めることはできないでしょうか?」と尋ね、改めてチラシを見てもらう。読めば県民投票運動の概要が分かるのみならず、このチラシには受任者になり署名簿の郵送を依頼するためのハガキも付いている。署名数を広げていくためには、街頭で署名してくれた人に受任者になるよう働きかけることも重要だ。

水戸でのキックオフ

県民投票への思いを語る鵜沢共同代表

水戸では、3人の請求代表者が集結した。請求代表者の一人の鵜沢恵一さんは、原発問題のみならず、貧困などの他の問題も含め「いろんな考えの方がいろんな思いでちゃんと語れる社会」「議論して、対話して、一番いい社会はどういうものなのか、と話し合える社会」を目指しており、そのきっかけとなる県民投票には非常に共感できる、と運動に参加する理由を語った。(もう少し詳しい内容については、Webサイト掲載の鵜沢さんのメッセージをご覧ください)

また同じく請求代表者の姜咲知子さんは、「自分たちの食べ物を自分たちで作りたい」という思いから45年前に設立された農場で働き、暮らしていて、これは「自分たちのことを自分たちで決められる」社会を目指す県民投票とリンクしていると述べた。また「年配の方も、若いお母さんも、サラリーマンの方も、多様な方々が一緒に活動できる」ことを県民投票運動の良いところとして挙げた。

説明会の終了後、水戸駅北口と南口のデッキに分かれて、雨が降る中署名活動に多くの受任者が参加した。

●請求の要旨

水戸での署名説明会が始まる直前、配られた資料に目を通していると、共同代表の姜さんに「請求の要旨、良くないですか?各地の請求の要旨をよく読んだうえで、かなりの議論を重ねて決まったものなんですよ」と声をかけられた。確かに良くできている。茨城の請求の要旨(クリックするとPDFが開き、全文を確認できます)に特徴的なところを幾つかピックアップしたいと思う。

  • 「福島第一原発」「放射能」という単語が登場しない。脱原発色が無いよう徹底されているように思える。
  • なぜ県民投票が求められるのかの理由付けの前提として「団体自治」と「住民自治」に触れている。
  • 「熟議と対話」という言葉を入れている。「対話カフェ」を積み重ねてきた会の想いが感じられる。
  • なぜアンケート調査や選挙ではダメなのかを指摘し、「間接民主主義を補完する手段」として住民投票を位置づけた。いわば、議会審議で予想される県民投票反対論に対する反駁を埋め込んでいる。

クラウドファンディング

他にもこの運動の特色として挙げられるのが、クラウドファンディングを活用した資金集めだろう。静岡県御前崎市での住民投票の直接請求運動でもクラウドファンディングが利用されたが、原発住民投票を求める直接請求運動でクラウドファンディングが利用されたのは今回が日本で初めてだ。

クラウドファンディングのページを開くと、ポップなイラストが目に入ってくる。「茨城県初県民投票を実現したい!話そう 選ぼう いばらきの未来」というタイトルを体現するかのように、市民の参加により茨城の明るい未来が選ばれていく姿が描かれている。

目標金額を達成した場合のみ資金を受け取ることができる方式が採用されており、その金額は150万円に設定された。しかし、目標額の倍以上のお金を集めたいところだ。というのも、クラウドファンディングを開始するまでにかかった経費は約150万円。今後かかると見積もられている経費が350万円だからだ。

お金があればあるだけ効果的なキャンペーンを展開できるのだから、「これだけあれば十分」という数字は実際には存在しない。たとえば、都民投票のときは終盤に受任者にハガキを出して署名簿の返送をお願いしたが、これには相当なお金がかかった。また余裕があれば、愛媛県八幡浜市での直接請求署名収集で何度か行われたように、(茨城の場合は地域を絞ってということになるだろうが)新聞折り込みでチラシを配布することも可能になるだろう。

協力者へのリターンには魅力的な内容が並び、工夫が感じられるものになっている。県内外の31人の作家から協力を得て、陶芸などの作品が用意されていることが一番の特徴だろう。また、講座やワークショップの開催権も面白い。お礼のメール、進捗連絡、Facebookグループへの招待、報告書の送付といったリターンもある。

また新着メッセージページには、当会の賛同人でもある想田和弘さん(映像作家)が応援メッセージを寄せているほか、共同代表やリターン提供者のメッセージも掲載されている。筆者も、みんなで決めよう「原発」国民投票を代表してメッセージを寄せているので、ぜひ読んでみてほしい。 応援コメントもぞくぞく寄せられており、共同代表の姜さんが一つ一つのコメントに丁寧に返信しているところが印象的だ。

今後の動きと私たちにできること

今後の大きな動きとしては、2月11日に署名期間の中間イベントとして水戸市内の茨城県立青少年会館で「県民投票フェス vol.5 全国の経験者と語る 県民投票トークライブ」が開催される。東京、新潟、静岡、宮城、沖縄の直接請求に関わったメンバーが集結してシンポジウムなどが行われるのだ。筆者も、みんなで決めよう「原発」国民投票を代表してイベントに参加する予定だ。

茨城県民でなくても、どこに住んでいても実施できるのは資金的な援助だ。既に述べたクラウドファンディングの他、銀行振込、郵便振替、クレジットカードでの寄付もできるようになっている。詳しくは、いばらき原発県民投票の会のWebサイトを確認していただきたい。

また、会のFacebookページ会のTwitterアカウントをフォローして、その投稿を拡散してほしい。その結果全国にこの運動が知られるようになれば、それは回りまわって茨城県民にも届きやすくなるだろう。もちろん、茨城県民に知り合いがいれば、この署名集めについて直接知らせることは最も効果的だ。また、特に関東の人には、ぜひ一度だけでも現地に足を運んで、署名活動の応援に参加してもらいたい。いつどこに行けばいいのかは調整をするので、みんなで決めよう「原発」国民投票までご連絡いただきたい。  (運営委員長・鹿野)

いばらき原発県民投票 直接請求の署名開始!

1月6日、 市民グループ「いばらき原発県民投票の会」が茨城県庁で大井川知事から 「請求代表者証明書」の交付を受け 、 県庁記者クラブ で記者会見を行い、 「東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例 」の制定を目指す直接請求の署名期間が正式にスタートしました。

詳細な情報については、 「いばらき原発県民投票の会」 が運営するWebサイト、FBページ、Twitterアカウントをご覧ください。

いばらき原発県民投票の会 – Webサイト

いばらき原発県民投票の会 – Facebookページ

いばらき原発県民投票の会 – Twitterアカウント

会の概要や条例案、受任者説明会や署名活動の予定についてはWebサイトにまとまっています。FBページとTwitterアカウントは、ぜひフォローと「いいね」をお願いします!

来る11(土)、12(日)、13(月)の3連休には、各地で説明会と街頭署名がセットで実施されます。街頭署名では、旗を持ったり何かと受任者でなくてもできることがあります。 県外の方もぜひ現地を訪れてください。