ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第7回) by しばけん

ブルガリアの全国民に問いかけられた「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」という質問。最終的な投票率はまだ出ていないが1月27日の時点では、投票率は21.8%。そのうち賛成派が61%、反対が39%となった。拘束力を持つ60%(前回総選挙の投票者数)には程遠く及ばなかった。ただ、過半数が賛成し投票率が20%を超えた場合、国会での再審議が必要で、去年3月に政府が中止を決定したベレネ原発建設計画についてもう一度、国会で議論されることが見込まれる。その場合政府は3ヶ月以内に結果を出さなければならない。

投票翌日は、どの新聞も一面には原発国民投票の結果。

投票翌日は、どの新聞も一面には原発国民投票の結果。

ブルガリアの欧州における発展のための市民(GERB)のボリソフ首相は、20%強の投票率に注目。民衆の関心は低く、結論は国会に任されたと判断し、再審議では「ベレネ原発建設計画に反対する」と述べた。そして経済担当大臣のデリャン・ドブレフは「当然、すでに原発のあるコズロデュイに7つ目の原子炉を作るつもりだ。」と答えた。

一方、野党の社会党(BSP)は投票率よりも、過半数の賛成意見に焦点を当てて「負けたのは首相」と強調。党首のセルガイ・シュタニエフは「この結果を歓迎する。そして賛成に投票した人にも、反対に投票した人にも感謝したい。ブルガリア人は積極的な選択をした。これで未来の子供達は技術を身につけて働くことができるだろう。この国民投票の成功は、新しい市民社会の幕開けである。」ついで「この低い投票率についてどう思いますか」と聞かれると「今の首相のボイコも前にソフィアの市長になる時、100万人の有権者に対して、20万人の投票であった。そしてGERBの議員120人より、国民投票に投票した150万人の方が多い。(だから議員の決定ではなく、国民投票の結果を尊重するべき)」と答えた。

テレビでも国民投票について取り上げられている。

テレビでも国民投票について取り上げられている。

原発反対派はこの結果を悔やんでばかりではない。「5年前、ブルガリアの反原発はたった10%であったが、少しずつ反対派が増え、今回は39%にまで達している。原発推進40年の洗脳が少しずつ解け始めている。」と希望を失っていない。

地域間の差は顕著だ。都市部ほど原発賛成の人が少ない。首都ソフィアではなんと賛成が49.8%で過半数を割っている。他の都市部でも賛成が57%で平均より低い。一方、小さな町や村では67.7%が賛成していてベレネのあるプレヴェン州はさらに高く77.5%にものぼっている。

さらに、年齢別で見てみると、18歳から30歳は賛成が53.6%。31歳から50歳までが51.5%。51歳以上は66.2%となっている。51歳以上が他の世代より10ポイント以上高いのは、ソ連時代からの社会党(BSP)支持者が多く、伝統的に原子力推進政策が進められてきた世代のためという見方もある。

では投票に行かなかった大多数の約8割の人が何を考えていたのか。一番の理由は「どっちに投票しても原発政策は進められるから。」上記のような与野党の攻防は今に始まったわけではなく、ブルガリア人はこのような政争に辟易しているのだ。また質問があいまいなので、国民投票の結果を政治家の解釈によって都合よく使われてしまうのを恐れたという人も多い。

最終回「無効?不成立?リトアニア国民投票との比較」


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プロフィール
大芝健太郎 しばけん
26歳 フリーライター
「原発」国民投票賛同人
「原発」国民投票 調査団のメンバーとして
リトアニア国民投票も現地取材

月刊「社会運動」連載中
雑誌「NOU LIFE STYLE」他

Blog: http://shibaken612.blogspot.com
Twitter: https://twitter.com/shibaken612

2013年1月29日 | コメント/トラックバック(0) |

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ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第6回) by しばけん

普通のレストランのガラス窓に貼られる投票場所

普通のレストランのガラス窓に貼られる投票場所

2013年1月27日。首都ソフィアの天気は曇り時々晴れ。昨日降った雪で少し滑りやすいことを除けば、寒すぎることもなく、投票日和である。投票時間は朝の6時から夜の19時まで。町の掲示板や、インターネットで自分の投票する場所をチェックして投票に出向く。投票所は小学校が主だが、大学の施設なども使われていた。投票所の入口には自分の投票する部屋が張り出されている。この番地の人は理科室、あの番地の人は社会科室…などといった具合だ。足が悪い人の投票する部屋が3階で、小学校にはエレベーターがないなんてこともあり、苦労して階段を登っている人もいた。もっとも車椅子マークの部屋も入り口から近いところにあったので、事前に申請すれば、その部屋で投票できるのだろう。

投票所になっているソフィアの小学校

投票所になっているソフィアの小学校

各部屋の中には、4人くらいの管理者がいる。投票者は部屋に入ってまず、管理者に身分証明書を見せ、選挙人名簿に載っているのを確認してもらい、投票用紙と投票用紙をいれる封筒を受け取る。それらを持って部屋の隅にある薄くて白い布で仕切られた個室に入り、その中で投票用紙に記入して、封筒に入れる。そして封筒ごと、透明な投票箱の中にいれる。投票したら最後に選挙人名簿にサインをしてすべて終了だ。日本のように箱を不透明にすれば、封筒に入れたり、出したりする手間が省けるはずだが、投票する前から投票箱に票が入っているということなど、不正を防ぐためだろう。

投票用紙のサンプル 「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」

投票用紙のサンプル
「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」

18時時点の投票率は20.3%。出口調査では6割が賛成。反対は4割だった。
そして19時きっかりに投票は締め切られ、すぐに開票作業が開始された。

最終的な投票人数は140万人。投票率にして21.8%。有効投票のうち61%が新規原発の建設に賛成、反対が39%。つまり国民投票で賛成派が過半数を占めるということが明らかになった。

投票の様子

投票の様子

本来であれば国民投票の結果を受けて「新規原発建設」という方向に政府は舵を取るべきだ。しかし拘束力を持つための434万人には程遠い140万人という数字に終わった。ブルガリア政府は新規原発の建設に関して「20%超の投票率で過半数を超える賛成意見として国会の議論にあげる」ということに留らせる。投票率の低さにより、国民投票を経てもなお、結局の方向性は国会に預けられる形になった。そしてこの投票率の低さから、各政党、個人が自分の都合の良いように解釈していく。

次回は「国民投票の結果をどう解釈するか」


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2013年1月28日 | コメント/トラックバック(0) |

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ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第5回) by しばけん

前回レポートしたデモと集会をオーガナイズしたのは、ボリスラフ・サンドフさん。後日時間を取って頂いて、インタビューをさせて頂いた。声をかけた時は存じ上げてなかったのだが、ブルガリアGreens(日本でいう緑の党)の共同議長の方だった。投票の4日前で、テレビやラジオの出演、首相との会談、イベントや討論会の打ち合わせなどを抱えており大変忙しそうであった中で実現した。

2つの携帯とマックブックを同時に使いこなす 多忙を極めるボリスラフさん

2つの携帯とマックブックを同時に使いこなす
多忙を極めるボリスラフさん

彼曰く、もう何度も前回のようなデモ(原発のことではなく環境破壊を止めるデモ)をやっていて、始めは800人程だったが 最終的には5000人くらいになって街の中央の橋を人で閉鎖したりして、首相の決定にも影響を与えている。また別のデモでは10000人を超えるものもあった。

「フクシマの事故は皆さん知っていますか?」と聞くと、「フクシマのことは一斉に報道されたが、今はもうフクシマの影響は忘れてしまっている人も多い。そして、もうすぐ二年が経とうとしているが、今のフクシマの現状を知る由もない。チェルノブイリやスリーマイルのように風化していってしまう。それに対して、推進派は問題点を棚にあげて、原発は安い、安全、生き残る道だ。と言い続けている。」

次に国民投票についてどう思うか聞いてみると「もちろんやるべき」と答えた。そこで僕が「情報がきちんと行き渡ってないから、やらない方がいいんじゃないですか?」とかまをかけると「今、私たちが決めなければならない。政治家に決めさせてはいけない。決定した後、政治家はいなくなってしまうけれど、原子力のゴミは後世にも残るし、ブルガリア人は住み続けるし、子どもの達の未来もある。だから今、私たちが決めるべきだ」と力強く答えた。

しかし実際の投票率はかなり低くなりそうだ。23日に発表された統計によると、27%~37%。国民投票が法的拘束力を持つのは、2009年に行われた総選挙の投票率である60%を超える必要があるので、それには程遠い数字だ。

ではどうしてこんなにも低い投票率になりそうなのだろうか。その一番の理由は投票の結果が、政府の決定に影響を与えないからだという。「新しい原発でブルガリアの原子力発電を発展させますか?」という設問。与党のGERBはNoが多くても既にある「新しくない」コズロデュイ原発を延長して使う計画を進めようとしている。そしてYesも同様で、さらに「新しい」原子炉7号機8号機を作るという計画もある。つまり、どっちにしてもGERBは原発を使い続けることになる。そして、野党のBSPが国民投票で復活させようとした「ベレネ原発」が焦点になっていない。さらに今まで通りに原発が使われるので「原発の是非」も焦点になりづらくなってしまっている。

もともと消極的な人が投票にいかないという状況に加えて、このような状態で行われる国民投票に「金の無駄」「一部の政党のための国民投票」「設問を変えたのがいけない」などという理由で政治や原発に積極的な人までも投票をボイコットする。クネヴァ元大統領候補の率いる政党「市民のブルガリア」も国民投票はボイコットするように呼びかけている。それらが投票率27%~37%という調査結果に表れている。

結果の扱われ方、設問、政党の利益などの問題点は確かにあるかもしれないが、それでもなお、「新規原発に賛成か反対か」国民一人ひとりが主権者の意思を直接示すことができるのが国民投票である。結果が出た後にどう政治家が判断するか。それを見極めて、次の選挙にいかせば良いではないか。もともと国民投票に消極的な人はまだしも、積極的な人までが投票をボイコットしては、政治家は動かせない。投票しないということは、政治家への無言の服従にしかならない。しかしブルガリアはこの世論調査のあと、投票率が上がるための何の決定打もないまま、投票日を迎える。


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ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第4回) by しばけん

ブルガリアは既に原発を持っている。ブルガリアの北部、ルーマニアとの国境であるドナウ川沿いのコズロデュイに計6炉の原発を所持している。1号炉は1974年から稼働開始、その後も次々と建設し1991年には全6炉が完成し、最大376万kwを発電していた。老朽化のため2002年には1.2号炉を停止、2007年にはEU加盟の条件として3.4号炉を停止させたが、5.6号炉は現在も稼働中で、100万kwずつ。合計200万kw(ブルガリアの総電力の3割)を供給している。5.6号機の稼働は2017年、2019年までの予定であった。

マクドナルドの「M」のマークに放射能のマーク

マクドナルドの「M」のマークに放射能のマーク

去年の春、ベレネ原発建設計画中止を決めたあと、GERB政権はコズロデュイ原発5.6号機運用期間延長の準備調査を開始した。それぞれ2017年、2019年までとされている現行の運用期間を、2037年まで延長するもので、改修プロジェクトの費用は2.5億ユーロ程度が見込まれている。

一方で原発建設計画が中止されたベレネの人たちの反応はどうか。ベレネ市長のペーター・ドゥレフは「大多数の住民が、国民投票の結果によって、ベレネ原発計画の再開を望んでいる。新しい原発はインフラ整備の一つであり、EUの許可もおりている。これはベレネだけの発展ではなく、プレヴェン地域、ブルガリア北部、しいてはブルガリア中の発展につながる。求人も増え、経済的発展も自慢できるようになるだろう」と発言した。

ベリコ・タルノボ主教は多くの市庁舎や、地方の寺院で原発計画の復活させようと願う人を組織して、国民投票で賛成多数の結果を残せるように、会議やコンサートをやるつもりだと言う。

原発反対派はどうか。首都ソフィアを毎日歩き回っているのだが、全くポスターやチラシなどをみつけることができない。ただ、唯一見つけられたのは、マクドナルドの「M」のマークに放射能マークがついていたくらいであった。

ただ原発には反対というブルガリア人女性に話を聞いていると「そういえば今日、原発国民投票のことじゃないけど、デモがあるのよ。あと30分後に始まるんだけど行ってみる?」と言われて場所を教えてもらうなり、出発地点まで直行した。

近づくにつれて何やら騒がしい。ラッパや、フエの音が鳴り止まない。集合場所は交差点なのだが、出発直前ということもあり、すごい人だかりだ。しかも大通りなので、その横を路面電車が通り抜けていく。パトカーの青いランプも、ブルガリアの国旗も、プラカードもピエロみたいに変装している人もいて、見た目にもとても騒がしい。

大通りをねり歩く「Save Green」の人達のデモ

大通りをねり歩く「Save Green」の人達のデモ

詳しく聞かないで、出てきてしまったのだけれど、このデモは海や山や森など、自然を破壊する開発に反対する人たちのデモだった。ここにいる人たちは、ほぼ全員原発にも反対しているようだ。僕が聞いた中でも、一人だけ「原発は難しい」と言うおじさんがいたが、その人以外は、みんな反対の人達だった。

しかし、なぜ国民投票が近いのに、しかも原発反対の人たちがこんなに多いのに、原発反対のデモをやらないのかとても不思議だ。「なんでソフィアに原発反対のポスターとかチラシがないのですか?」と聞くと「それはお金がないからよ」と言っていた。別に禁止されているわけではないようだ。それにしても若い人もたくさん参加していた。そして、おじちゃん、おばちゃんも。子ども連れの人も何人かいた。何人くらいいたんだろうか。3000人くらいであったのではないかと思う。

デモ後は広場に集まって「マフィア!マフィア!」と国会に向かってコールしていた。山や海を売るなと。最後にこのデモをオーガナイズしていた緑の党の議長に「ちょっと今度ゆっくりお話を…」と伺ったら快く引き受けてくださった。

次回は「緑の党議長のインタビュー」


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ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第3回) by しばけん

「首相、突然YesからNoへ。」

大学の隣の大きな駅で配られていた週間新聞。「AHOHC」

大学の隣の大きな駅で配られていた週間新聞。「AHOHC」

国民投票は日本ではまだ行われたことがない。しかし世界では既に1100件以上も行われており、「国民の大事なことを決めるのは、国民投票で」が常識になっている。

ブルガリアでも1922年、1946年、1971年にそれぞれ、君主制から共和制に移行について、国家犯罪について、憲法についての国民投票が行われている。しかし、1989年の共産主義政権崩壊以来は一度も国民投票が行われたことがなかったが、今回、民主化して以来、初めての国民投票が行われることになる。

昨年11月に実施されたリトアニアでの「原発」国民投票は、総選挙と一緒に行われたため、政党は国民投票ではなく選挙のことに力を注ぐことになった。国民は原発に加えて、どの政党を選ぶかについても、考えなければならなかった。しかし今回のブルガリアの国民投票は単独で行われるので、選挙と同時に行われるよりも原発に焦点が当たりやすい。

今回成立したブルガリアの国民投票法はどのようなものだろうか。
基本的に、普段の選挙と同じように行われると報じられている。大統領が法令を発行した時点で、ブルガリアで市民権を持っていて、住所があり、拘留などを受けていない18歳以上のすべての人に投票権が与えられる。また在外ブルガリア人にも投票権が認められているが、投票できる場所は、大使館か総領事館のみである。

中には原発国民投票の特集。 賛成意見と反対意見が並べられている。

中には原発国民投票の特集。
賛成意見と反対意見が並べられている。

有権者は白い投票用紙に書かれた「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」という問いに「はい」か「いいえ」を選んで、青いペンで記入することになる。

また今回の国民投票が法的な拘束力を持つのは、最低でも前回の2009年に行われた総選挙と同じ人数の投票が必要である。つまり4345250人(約60%)以上の投票が必要であり、そのうちどちらか一票でも多いという結果が出て有効になる。

ブルガリア国民は原発はコスト削減になる、または雇用を生み出すと思っているようで、原発に賛成派が多数を占める。ブルガリアの失業率は11.3%で、仕事を求める若者の海外流出も激しい。これはブルガリアの直面している大きな問題の一つだ。世論調査国家センターによると(1月6日現在)回答者の62.5パーセントが賛成。その一方で反対は37.5パーセントだった。

原発賛成派の圧倒的優勢かと思われたが、しかし投票の2週間前の1月12日になって、首相のボイコ・ボリソフが突然「国民投票で『No』とGERB党員や支持者に呼びかける」とTV7という番組で訴えたのである。これはGERB党員などを狼狽させた。僕もかなり驚いてこのことについて、ブルガリア市民に意見を求めると、意外にも彼らは冷静であった。なぜなら、ボイコ首相は意見をよく変えるので最後までわからないということだそうだ。しかし、この首相の「No」発言によって「No」と投票する人が増えるかもしれないと言う人もいた。

「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」
投票日は1月27日。即日開票される。

次回はブルガリアの現在唯一の原発「コズロデュイ原発」について。

参考
東京新聞
Sofia News Agency 他


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リレーメッセージ「第12回 千葉麗子」

大阪市、東京都で展開された「原発」住民投票条例制定請求の署名収集活動から1年が経ちました。立地先の住民のみならず、大量消費地で暮らす都市住民にも「原発」の問題に関わっていく責任と権利がある──そういった考えから、本会が多くの人々に呼びかけて起こしたこの直接請求運動は、市民自治の観点から歴史的な意味をもつものになりました。
今回の「賛同人リレーメッセージ」では、東京の請求代表人を務めた千葉麗子さんに、大阪の請求代表人だった今井一が話を伺いました。


記事中、千葉麗子さんの発言は「千葉」、今井一の発言は「今井」と表記しています。


今井 年が変わって随分たちましたが、明けまして、おめでとうございます。

千葉 おめでとうございます、本年もよろしくお願いします♪

今井 さて、去年は、千葉さんにとってどんな年でしたか。

千葉 うーん、激動の1年でした。特に、請求代表人の一人になって、「原発」都民投票条例制定を求める署名を集めたのは、心に深く残ってます。

今井 そう、ちょうど1年前にやってたよねえ。30万筆目指して毎日必死でした。

2011年11月12日、直接請求署名活動決起集会にて。

2011年11月12日、直接請求署名活動決起集会にて。

千葉 やってた、あの寒いなか!!!渋谷や新宿の駅前で、中学生の富樫泰良君や高校生の斎藤ニコラス君、それからシバケン(大芝健太郎)、ドッキョ(山本雅昭)という若い世代、そういうみんなと頑張りました。

今井 大阪でも同じ時期に市民投票の署名集めをやったでしょ。東京でも都民投票やったでしょ。今、東京とか大阪で、みどりの関係とか脱原発の関係とか、行政に注文を付けるいろんな動きが起きてるんだけど、それに足を踏み出したきっかけがね、市民投票や都民投票の署名集めの運動に参加したことだった。あれで目覚めたっていう人が多いのね。

千葉 うん、いる。

今井 だから、署名を集め終わって請求して、議会で否決されたけども、その人たちがまた新たなフィールドで元気に活動してるのよね。

千葉 そうそうそう、それを、現場で、ほんとすごく、「あ、この人もだ、この人もだ」っていうのは、若い世代のなかでは感じた。

今井 そういう意味で言ったら、辛かったけども市民投票も都民投票もやってよかったよね。

 

国会前にて。反原連のステージ。

国会前にて。反原連のステージ。

千葉 よかった。私もいろんな事やってるんだけど、こないだもね、国会前の反原連のステージのとこで司会やって、シュプレヒコールして、スピーチをやったときに、「え、レイちゃんって福島出身だったんだ」って、まだ知らない人もいて驚かれたんだけども、やっぱり自分自身が福島のね、あの酷い事故をきっかけに、何かをしなきゃいけない、何かを変えなきゃ、学ばなきゃいけないっていう気持ちで必死に過ごした1年だったから、まずはその、「署名」という手法、手段、ベクトルっていうところから入れたってことはやっぱりよかったの。というのは、すごく厳しい環境だったから。

今井 厳しかったよね、例えば、渋谷のあのスクランブル交差点で、早足で通り過ぎていくみんなに呼びかけ、立ち止まってくれた初対面の人たちに名前と住所と生年月日を書いてもらう。

千葉 それで、ハンコまで押してもらわないとだめだし。

今井 そう。みんなハンコなんてもってないから、たいてい拇印だったよね。なんか犯罪者みたいで嫌だって言われたりして。

千葉 そう。だから、デモはデモでもちろん、寒い中、雨の中、ずっと立ったりとか声をあげたりとか大変なことではあるんだけども、法定の署名集めはもう本当にもっと過酷な状況のなかでやったことだと思うんだよね。受任者もそうだし、私のような請求代表人もそうだけども、みんな、お手伝いの人たちも、やれハンコ、朱肉ねえ(笑)!それでそんな細かい作業を厳しい経験をしてきたからこそ、デモに行ったりとかするっていうのは、なんかすごく気楽で楽しく感じることすらあるのよね。

今井 僕はね、今の話聞いてて思ったんだけど、あの、デモはもちろん意味があるし、僕も時々官邸前集会には参加してるんですけどね、デモと直接請求の署名集めの決定的な違いはね、デモは、自分がその気になったら行けるんですよね。自分さえその気になったら、寒かろうが雨が降ろうがね、自分が行こう、と思えばやれること。だけど署名集めの大変なのは、他の人、他の人間をその気にさせなければいけない、という(笑)、

千葉 そう、そう。

今井 これが大変だよね。ふつう、住所、名前、生年月日を書いて拇印を押そうという気にはなかなかならない。

千葉 そう、ならない。

今井 脅したり殴ったりしてというんじゃなくって、ほんとに納得してもらって、署名・押印してもらう、と。これが大変なのよね。

千葉 そうそう。だからもう、説明して、同意を得なければいけないっていう作業が、まずデモよりもね、難しい点としてあった!

今井 そのデモが去年の夏以降徐々に盛り上がっていってね、

千葉 デモや抗議も、盛り上がったー。

今井 で、秋にピークを迎えて、すごかったじゃない。一時は10万人20万人に達して。総選挙の結果は、あんなふうではあったけど、官邸前集会にしろね、ほかの動きにしろ、何かどこかが確実に変わりつつあるよね。

千葉 ある!大飯原発が再稼働になったと。あのとき20万人ぐらい集まって、すごい人の波になった。でも今参加者は減ってるじゃないかって言ってる人たちがいるけど、私は全然そう思ってなくて、こないだも言ったのは、ヨーガも茶道も日本舞踊もそうなんだけど、家元があって、そこから分家が起きていくわけなんですよ。つまり、みんなが各地から、例えば大阪のみんなは現場に見に来て、あれを体感したわけだ。

今井 はい。

千葉 あのとき、20万人のとか。首相官邸前に、みんなバス出して来たり、各地から来たんだよね。あのときの何週間かのところで何回か、もしくは何回か通ったみんなが、それぞれ、各地に、例えば仙台に、九州は九電前に、北海道は札幌…といろんなところに行って、広げているじゃない?感銘を受けて、影響を受けて、それで各地での動きを起こしてるよね。大阪なら、関電前とか…全国今ではどこかしらでデモや抗議が行われてるもん。

今井 はい。

千葉 お教室もそうじゃない?だからそれと同じだと思っていて、数は、全部トータルで全国の参加者人数まで混ぜたら誰もカウントができないわけだから!

今井 なるほど、うん。

千葉 私は、民意っていうのは育っていると思っているし、全然、その、数で減ったとかっていう感じはしてない。逆に広がってよかったね、っていう気持ちなんだ今。
各地に分散してった方がよかったんだから。東京だけでやっててもしょうがないわけだしね。みんな通えないんだから!

リトアニア・イグナリナ原発にて職員と。

リトアニア・イグナリナ原発にて職員と。

今井 あと、千葉麗子さんと言えばですね、リトアニアまで行ってくれた。「原発」国民投票の調査・取材で。

千葉 ねー♪

今井 あの寒い寒いリトアニアに。

千葉 面白かったねー。

今井 それでね、僕はもう麗ちゃんにほんとに感謝してんのは、あの時に、若い人を連れてってくれ、連れてった方がいいよと助言してくれた。あれで、山本君(ドッキョ)と、大芝君(しばけん)に声をかけたわけですよね。で、この二人が大活躍してくれて、もし麗ちゃんが言ってくれなかったら、僕はこの二人を連れて行くということを思い浮かばなかったと思う。だからね、ほんとに感謝してます。

千葉 あのときはもう、ほんとに、自分のなかでどういう気持ちだったかっていうと、やっぱり世代が高い方々だったりとかっていうのは、市民活動も上手だし、プロフェッショナルであるし、今までもやってきてるわけだからね、そんななかの枠だけではなくて、やっぱりね、若い世代が見なかったら、次に伝えることが、このウチの会もできないからね、下が育たないっていう。

今井 うんうん。

千葉 だから、ドッキョもこれから伝えていってほしいし、あと、シバケンなんかも、それがきっかけでね、世界に対しての目をね、向けるようになったじゃない?ドイツに今回ね、旅立ったっていうことは、すごく大きい。成長して、またスキルを持ち帰ってくれると思うしね。

今井 そう。シバケンなんて、ブルガリアでの「原発」国民投票の現地取材に入って、うちのウェブサイトに1月下旬からリポートを連載ですよ。

千葉 すごい。

今井 とにかく、何でリトアニアまで赴いたかっていうと、住民投票は、日本でもう400件以上、巻町や御嵩町や名護市でやってんだけども、国民投票は1回もやったことがないもんだから、みんな具体的なイメージ、感じがわかんないのよね。

千葉 うん。

今井 僕はスイスやフランスやロシアで、国民投票の現場を何回も見聞きしてるけど、うちの賛同人や仲間はそうじゃない。だから、国民投票の現場をまず見てもらわないといけないと考えて、それで今回9人で赴いたんだけど、どうですか、やっぱり現場見て、何か感じるところありました?

千葉 うん、感じた。私はね、もうね、なんか、「あ、これいけるな」って思ってたよね。だってみんなは、なんだっけ、あのときさあ、行く前まで、日立の「原発」新設を、賛成する人が多いだろうと、

今井 多いだろうと、きっと多いだろうと。

千葉 そうそうそうそう、うん、そう言ってたわけだけども、私は世界的な動きを見てたら絶対に、パブコメの結果もそうだけども、日本では脱原発が7割8割っていうのを信じているし、ある一部の、一定の儲かる人たち、原発の恩恵を受けてる人たち以外は、ほとんどは危ないものはいらないって言うのに決まってるから、勝つ。勝つというのはその、新設は反対っていう人たちの方のが声は大きいだろうなあ、と思ってた。

今井 ところがさ、リトアニアでは国民投票と同時に行われた国会議員選挙の結果だけ見たら、緑の党のメンバーとかは全員落選してるし、反原発はみんな落選してたよね。でも、国民投票では6割以上が「原発」反対。

千葉 そうそうそう。だから、そういうことを現場で直接体感し目の当たりに見れたのはすごい面白いよね。行って本当によかった。

今井 12月の総選挙が終わったあとね、「もう国民の馬鹿さ加減にうんざりしてる」とか「こんな愚かしい自民党を原発推進の人たちを勝たせるような、日本人なのに国民投票なんかとても危なくてやってられない」と、たくさん事務所に電話があったんですよ。

千葉 そうなんだ?

今井 だけど違うんだって。日本人が愚かしいんじゃなくって、ルールがおかしいんだって。あのね、さっきも言ったけど、リトアニアの人、国民投票で65%が反対したリトアニアの人だって、反原発の国会議員は一人も通ってないわけだから、ルールがそういうルールだから、日本人が馬鹿なんじゃなくってね、ワンイシュー(単一案件)では争わない選挙、ましてや小選挙区制のルールでは、反原発の意思は通らないよね。

千葉 通らないと思う。これはあと何年も変わんないんじゃない?うん。選挙では。だから、国民投票が大事だってことを言ってるわけでしょ、私たちはずっとね。

今井 麗ちゃんの前にこの欄に登場してくれた笹口孝明さんが、原発がいるかいらないかも、もちろん大切な問題だと。だけどその前にね、主権者がちゃんと自分たちで決めてるのかどうか、自分たちで自分たちの未来を選べることができるのかどうか、そっちの方がもっと大事だってこう、おっしゃったのね。

千葉 言ってる、はい。

今井 だから、我々の仲間でもね、絶対に反原発が勝つんだったらいいけども、負ける可能性があるんだったらやらない方がいいっていう人が相変わらず多いんだけども、それは違う。麗ちゃんもリトアニアの現場に行って、ドッキョやしばけんと一緒に調査・取材して、賛成の人も反対の人も、国民投票で決めることについてはこれでいいというふうに言ってたけども、

千葉 そう、言ってた。

今井 どうかな、麗ちゃん、改めて、勝ち負けじゃなくって、この一人ひとりが首相や議員と言う代理人に委ねず自分たちで直接決めるっていう大切さみたいなものも今考えてる?

会の共同代表に就任した宮台真司氏とのスナップ。

会の共同代表に就任した宮台真司氏とのスナップ。

千葉 うん、感じてる。感じてるし、同じようにこの先伝えていかなきゃいけないね、民主主義ってことでしょ。それも間接な民主主義じゃなくて、直接でね。

今井 直接でね。

千葉 そう。そこの大事さっていうのはみんな徐々にわかってくれるんじゃないかな。もうだって、総選挙があんな結果になって夏の参院選でもまぁそんな劇的には変わんねーだろ、みたいな気持ちになってるし。もう1回参院選で負けて、自民党が勝って、原発推進になって、もっと再稼働されてってどんどんならないと、じゃあ国民投票だ!って声あげようよ、っていうところまで、いかないのかもね(苦笑)?

今井 なるほど。でも、うちの会としては、参院選と「原発」国民投票の同時実施を求めていくけどね。

***  ***  ***  ***  ***  ***

 
今井 あとね、麗ちゃんは芸能界の人ともお付き合い多いじゃないですか。海外、特に欧米の人に比べて、日本のアーティストとか、役者、俳優、歌手みんな含めてだけども、なんでこんなに原発について、別に反対って言わなくちゃいけないって言ってんじゃなくて、賛成だったら賛成でもいいんだけど、なんで口をつぐむのかな、こんなに。

千葉 ほんとに不思議だね。私、アンジェリーナ・ジョリーとか好きだけどさぁ、金がどうのこうのっていうことじゃなくね、いやもちろん彼女はセレブだけども、そういうこととはさておき、孤児院だったりとかね、孤児の問題に、社会問題に目をつけて動くじゃない?みんな、自らの意思でね。

今井 自分自身も、子どもの養育を引き受けたりしてね。

千葉 そうそう、養子としてね。経済的に余裕がある人はそうしたりとか、自分ができる範囲のなかでボランティア、つまりその、ヨーガだと「カルマ・ヨーガ」って言って、無私無欲の精神で何かをするっていうことが基本、であるんだよね。日本はどうなんだろうね。無宗教にほとんど近い。クリスマスは騒いで、お正月はしめ飾り飾って、神様っていって全然輪廻転生も信じてない、ヒンドゥーじゃないしね。そんななかで、もうほんとにボランティアっていうと逆に毛嫌いされる言葉だったりとかね、そこに対する、まず精神がね、違うよね。馬鹿にされたりするでしょ、逆に。

今井 そう。

千葉 偽善者かって言われてしまうね、なんか妙に、出る杭は打たれるし、打つしね、足の引っ張り合いをする、っていうところが日本人のなかにはやっぱりすごくあるよね。私なんか全然、お父さんもお母さんも、どっちも生粋の日本人で。でも、私は韓国人の友達もたくさんいるし、アメリカ人にも、みんな、いろんな国に友達たちがいるからね!馬鹿馬鹿しいね、差別もそうだけども、それに、なんか近い感覚なんじゃない?狭い島国のなかで、ねぇ。

今井 内の会の賛同人でもある写真家の藤原新也さんとも話したんだけどね、藤原さんが、自分たち、このいわゆる文化人とかアーティストと呼ばれている人たちの役割っていうのは、普通のサラリーマンとか公務員がなかなか言えないことを、堂々とね、これ、おかしいじゃないかと世間に発する役割も背負ってるっていうふうに言ってるわけね。

千葉 うん。

今井 ほんと、そう思うのよ。

千葉 あたしもそう思う。

今井 ところが、むしろ、今パン屋のおっちゃんとか、豆腐屋のおばちゃんの方がはっきり原発について物を言ってる、賛成であろうが反対であろうがね。アーティストの方が逆に口つぐんで、なんか公務員みたいでしょう。公務員アーティストと呼びたい。もちろん公務員だって自由に発言できるんだけど、ほんとはね。

千葉 だから私もチバレイってやっぱちょっとすごいねって言われたのは、私には何も失うものも怖がるものもないから、経団連会館前抗議に足を運んだ1年でもあったのね。で、それって実はすごいことらしくて、つまり経団連会館、あそこの抗議には、なかに電事連も入っていて、つまりそのレコード会社もそうだけど、芸能プロダクションだったりとか、メディア、放送に関わるところ(笑)!

今井 そう、そう、そう。週刊誌も何もかもね。

千葉 うん、すべてを関わるとこなのね。だから、あそこの前で、「電事連解体!八木黙れー」とか「米倉黙れ!経団連解体―」とか!!!

今井 はっはっはっはっはっは(笑)

千葉 「再稼働はんたーい」とか「命を守れー」とか「八木出てこーい」とか、「米倉黙れ」ってみんなでシュプレヒコールしてるわけでしょう、何百人っていう仲間たちと。あたしは全然、そういう立場ね、もうアイドルをね、20歳で辞めたからいいけど、でも、そこを怖がらずに出てくるアーティストたちがもっと増えないかなぁ?と!

今井 そう、その通り。なんで坂本龍一や斎藤和義らだけなの、という感じやね。

千葉 そうだね。

今井 もちろん声を上げてる人はけっこういるけど。もっとメジャーな人が覚悟を決めて声を上げないと。黙ってることは容認するということなんだよね。で、今、私たちの生き方が問われてるんですよ。

千葉 そうだと思う。今、過渡期に入ってくるんじゃないかな、こっから、の1年が。

今井 そう。どんなふうに生きていくのか、ね。

千葉 そう。

今井 だから、我々が東電について批判をしたり、政府について批判をしたりすると同時にね、自分の生き方を問い直さなかったらねえ。

千葉 うん、いけないと思う。

今井 ねえ。

千葉 だから、あたしもそうでしょ。離婚したら離婚したっていうプライベートな話だけども、それなりの責任と覚悟を背負う。シングルマザーになるってことを選ぶんだったら、それについてのリスクも伴う。当たり前。そこに関しての責任や覚悟を取れない、で、旦那に我慢してる人は世の中いっぱいいると思うよ。だからそれと同じだと思うよ。誰もが公私ともども、自分の生き方だったりとかっていうのを見極めて、リスクを背負うところは背負う。

今井 そう。それでね、だから、都会の人は「ああ、福島の人はかわいそうだわ、1年半もあんなところに住んで」とかね、「故郷追われて」とか、かわいそうだかわいそうだと言ってるくせに、原発については自身で何も言わないというね、

千葉 そうだね。

今井 これがもうほんとによくないよね。ほんとに、ほんとに福島の人がかわいそうだと思うんだったら、勇気を出して「原発」のことは勝手に決めるな、自分たちに決めさせろという声をあげないとね。

千葉 うん。

今井 だって、これ、このままだったら安倍さん、どんどん再稼働するよ。

千葉 そう。

今井 最後に、3月10日に僕らは日本で初めての国民投票を求める、原発国民投票求めるデモと集会をやります。まあ、これまで反原発のデモはね、もう日本国中、毎週のようにあちこちで行われたけども、国民投票求めるデモって1回もやったことないでしょ。日本という国が始まって以来ね。

千葉 うん。新しいね!

今井 そう。で、それのデモと集会を3月10日にやるんですけども、麗ちゃんにもいろいろ手伝ってもらいたい。どうですか。

千葉 ねえ。画期的な運動だから、やっぱり今までの市民活動というイメージを拭い去るぐらいのかっこよさだったりとかシンプルさだったりとか、そういうのでやりたいよね。
市民活動は、素晴らしいし、尊敬すべきものだし、大事なことです。もちろん!なんだけども、そのなかでも今度はそれを、昔の、何十年も前の人がやってたテイストではなく、よりスマートなものにブラッシュアップしたい。フライヤー一つとっても、レイアウトもデザインもダサくていいっていうのじゃなくて、市民運動が、一番、いろんな意味で一番かっこよくて、一番最先端いかないとダメだ思う。結局は、どのように、今の時代の子たちに受け入れられるように、変化させて落とし込んでいくかっていうことだと思う。あと、うちの会には、浅田次郎さん藤原新也さん、坂本龍一さん、俵万智さん、大橋巨泉さんなんて有名な賛同人がいっぱいいるんだから、そういったみなさんにも3.10のデモや集会に参加してほしいよね。

今井 そうだね。3月10日にはね、ほんとにもうたくさんの人で新宿を練り歩きたいし、杉並公会堂も満席にしたいんですよね、1200席なんですけどね。とにかく、国民投票を求めている人が、日本にこんなにたくさんいるんだっていうことを見せたい。反原連の官邸前集会から可視化することの大切さ学びました。ウチは署名集めをたくさんしてます。これも大事なことなんですが、それと同時に声を上げてる人を目に見える形で示さないと。可視化をしてね、こんなにも求めてる人が多いということを見せるっていうのも大事だから、その一環としてね、3月10日はちゃんとデモをしようと考えたわけです。

千葉 初めてだからね。

今井 そう、日本初の国民投票デモだから、これメディアにも日本初だからということでPRをしようと思ってます。またいろいろお力添えください。

千葉 わかりました、はーい♪今年も、兄貴がんばろうね!


プロフィール
千葉麗子
(株)チェリーベイブ代表取締役
インテグラル・ヨーガ主宰


バックナンバー

賛同人、署名者のみなさんへの御案内(2013-1B)

みんなで決めよう「原発」国民投票 事務局の今井一です。
2013年、2度目のお知らせ、御案内です。
字数が少ない項目から順に記してあります。御一読ください。
 
 
[1]各党に「原発」国民投票についての面談申し入れ
  来週から2月中旬にかけて、各党の政策責任者に「原発」国民投票について面談する機会を得たいと考えています。「民主」「未来」「みんな」については、来週にも実現する見通しです。経過については、随時ウェブサイトに報告します。
 
[2]ブルガリアでの「原発」国民投票をリポート
 27日に投票が行われるブルガリアでの「原発」国民投票について、本会は会の賛同人でもあるライターの大芝健太郎さんを現地に特派しています。すでに2回のリポートを掲載していますが、この後、投票日を挟んで、現地から数回のリポートを連載します。
 ⇒ リポートはこちら
 また、96年に「原発」住民投票を執行した元新潟県巻町長・笹口孝明さんのお話も前編、後編の2度に分けて掲載しています。ぜひ御一読ください。
 ⇒ こちら
 
[3] 『原発、いのち、日本人』 がついに刊行
 浅田次郎さん、藤原新也さん、谷川俊太郎さんら、この本の、語り手、執筆者は全員、みんなで決めよう「原発」国民投票の賛同人です。

『原発、いのち、日本人』(集英社新書/1/17発売)
『原発、いのち、日本人』(集英社新書/1/17発売)
クリックするとAmazonにジャンプします。

 「原発」「いのち」「日本人」について個性的に語りながら、各人が 「原発」国民投票についての熱い思いも述べています。「原発」国民投票をPRするのに絶好の本です。ぜひ、友人や仲間にこの本の購読を勧めてください。〈アマゾン〉でも申し込めます(送料はかかりません)が、10冊以上でしたら送料不要で事務局から3日以内にお届けします。
 
[4]本会の共同代表について
  事務局と全国の調整委員が、杉田 敦(法政大学教授、政治学者)、宮台真司(首都大学教授、社会学者)両氏を共同代表に推挙した件について、たくさんの賛同人より電話、Eメールなどで御意見を頂戴しました。
 「賛成、了解」といった反応が大半でしたが、中には、承諾できない旨の意見もありました。決して難癖の類ではなく、冷静に理由を示されていました。これを無視することなく検討しましたが、就任を不可とするような決定的なものではないというのが私たちの認識です。よって、17日に正式に就任要請を行い、両氏に受諾していただきました。宮台氏は『原発、いのち、日本人』(集英社新書)の出版の集いの席上、杉田氏はそのあとの新年の集いの席上、同席した賛同人に向けて、所信を述べ挨拶されています。
 お二人の「原発」国民投票に対する考えは『原発をどうするか、みんなで決める――国民投票へ向けて』(岩波ブックレット)の中で明確に示されていますが、来月、所信表明をウェブサイトに掲載する予定です。
 
[5]3.10集会&デモについて
 3.11前日の3月10日(日)に、都内新宿で日本初の「原発」国民投票の実施を求める街頭デモを行い(午後4時~)、同日午後7時からは、杉並公会堂にて集会を開催します。このデモと集会には、首都圏のみならず全国のみなさんに参加していただきたい。首都圏での参加者を1200人、それ以外からの参加者を300人と、控えめな目標を設定しています。
チラシ(pdf)
 関西、東海では、すでにパスをチャーターして参加する準備を進めています(これだけで100人)。因みに、それにかかる交通費の半分は会が負担します。
 それで、
(1) すでに第1次チラシ・ポスターが刷り上がっているので、これを活用していただきたい。新リーフレットとあわせてお届けすることも可能です。30部~1000部まで対応。代金も送料も不要です。申し込みから数日以内にお届けします。申し込みは⇒ info@gkokumintohyo.com
 
(2) 本日より、参加確約状況を示す棒グラフをウェブサイトに載せ、ほぼ連日更新していきます。賛同人のみなさん、ご自身そしてお仲間の「参加」が固まったら、「3.10」という件名で、ここにメールを下さい。
info@gkokumintohyo.com
 メールには把握した参加人数と共にお名前・居住地域(埼玉県とか熊本県とか)を記し、[デモ&集会参加][デモのみ参加][集会のみ参加]のいずれかを明記してください。
 
※新リーフレットの送付申し込み依頼が、北海道から沖縄まで、この2週間で100件近く来ました。ありがとうございます。引き続き受け付けていますので、どんどん申し込んでください。

ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第2回) by しばけん

「どのように原発国民投票が行われることになったのか?」

1月19日の新聞「キャピタル(首都)」の一面「彼らの国民投票」 彼らとは政党のことである。

1月19日の新聞「キャピタル(首都)」の一面「彼らの国民投票」
彼らとは政党のことである。

国民投票は国民が大事なことを決める手段であるが、それと同時に今回のブルガリアの国民投票は政党間の政権争いに使われているのではないかと、ブルガリアの政治評論家は言う。それはどういうことなのだろうか。

ブルガリアの国会議員は240人で任期は4年の一院制である。2009年に行われた選挙で政権与党となった「ブルガリアの欧州における発展のための市民(GERB)」が117議席を占めている。前政権で現最大野党の「ブルガリアのための連合(BSP他)」40議席。「権利と自由のための運動(MRF)」35議席と続く。ブルガリアにも「緑の党」があり2005年には連立与党となったが、現在は議席を持っていない。

さて前回のレポートで少し触れたが、前政権で現野党のBSPは、ベレネでの新規原子力発電所政策を、ロシアの協力を得て推進してきた。しかし、去年3月に現政権与党のGERBの首相ボイコボリソフは、「費用がかかりすぎる」「法的な不備がある」としてベレネ原発の中止を決めた。GERBは現在あるコズロデュイ原発の計画を進めたいのだ。しかし、前政権のBSPは「ベレネ原発計画中止」を撤回させるために、国民投票を行うための請願署名を集め始めた。50万人(人口の6.7%)の署名が集まれば、議会での承認を経て、国民投票成立となる。

今回の野党BSPの国民投票を求める署名は、50万人を大きく上回り最終的には77万人(人口の10.3%)分が集まり、与党GERBもその請願を受け、議会で賛成多数で可決した。また、建設計画に携わった原発輸出企業アトムストロイエクスポート(ロシアの国有会社ロスアトムの傘下)がベレネ原発建設の中止を受けて10億ユーロ(約1000億円)の損害賠償を求めて法的措置に訴える方針を示したことも、GERBが請願を受けて、原発推進に回ったきっかけになっている。

与党GERBは、総選挙と同時に国民投票をやりたいと思っていたようだ。理由は2つ。一つは総選挙と同時に行うことによる予算の削減。もう一つは総選挙前に、原発の道筋が立ってしまうのを避けたいという理由だ。しかし、野党BSPが早期実現を促し、こうして、総選挙と同時ではなく1月27日に単独で国民投票が行われることが、去年の10月24日に決まったのだ。ちなみに4年に1度の総選挙は今年の7月に行われる。

野党BSPはベレネ原発の再検討を目指し、国民投票の設問を「ベレネ原発で原子力発電を発展させますか」と提案したが、与党GERBは「新しい原発で原子力利用を発展させますか」とベレネ原発に限らない形で国民に信を問うことにし、野党BSPを牽制した。しかし、どちらの党も原発には意欲的だ。与党GERBも原発の利用を継続しようとしている。2011年には東芝子会社の米原子力大手ウェスチングハウス・エレクトリックと協力を約束するなど米国への接近を図っている。昨年3月のベレネ原発中止決定は「前政権の計画は認められない」という意味にすぎなかったようだ。

「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」
投票日は1月27日。即日開票される。

次回は「首相、突然YesからNoへ。」

参考
東京新聞
外務省HP
Sofia News Agency 他


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プロフィール
大芝健太郎 しばけん
26歳 フリーライター
「原発」国民投票賛同人
「原発」国民投票 調査団のメンバーとして
リトアニア国民投票も現地取材

月刊「社会運動」連載中
雑誌「NOU LIFE STYLE」他

Blog: http://shibaken612.blogspot.com
Twitter: https://twitter.com/shibaken612

2013年1月23日 | コメント/トラックバック(0) |

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