宮城:「原発」県民投票条例の制定を求める 直接請求署名運動キックオフ集会が開催されました

9月23日(日)、宮城県仙台市内の東京エレクトンホール宮城で「『原発』県民投票条例の制定を求める 直接請求署名運動キックオフ集会」が開催された。

主催は「女川原発再稼働の是非をみんなで決める県民投票を実現する会」(以降、「みんなで決める会」)で、集会では10月2日から2か月間、直接請求署名運動が行われることが確認された。

200人以上が参加し、会場は超満員で立ち見が出るほど。質疑応答も活発に行われ、有権者の50分の1、法定署名数4万筆をクリアしてできるだけ多くの署名を集め、条例案を議会で通過させるという、これから始まる大きな挑戦に向けて、熱気が感じられた。

運動の経過と到達点
 
冒頭、「みんなで決める会」の代表を務める多々良哲さんがこれまでの経過を説明した。女川原発の再稼働に向けて正念場が近づくという認識のもと、県民投票を求める直接請求が提案され「みんなで決める会」が立ち上がり、4月14日に第1回の賛同人会議が開かれた。それから約5ヶ月間にわたり、直接請求の署名集め開始に向けて準備が重ねられた。

重点的に力を入れてきたのが、県内各地で学習会、地域集会を数多く実施して、受任者(署名を集める人)の事前登録をすること。会のスタッフが呼ばれての会合だけでも89箇所におよび、約2日に1回というペースで実施された。それ以外にも、説明会に参加した人が自主的に開いた小集会が各地で行われており、これについては会としても全体像は把握できていないという。

その結果、現時点で宮城県内39市区町村のうちの27市区町村で連絡会や実行委員会が立ち上がり、受任者予定者は約7千人に及ぶ。新潟県民投票のときは最終的に受任者数が3783人で、署名数が7万2027筆だった。新潟県と宮城県の有権者数がほぼ同じことを考えて新潟と比較すると、現時点での到達点は大きいと説明した。

多々良代表

そして、「法定署名数を集める署名運動の準備ができましたので、10月、11月の2か月間を署名期間に設定して、直接請求の署名を集めきる運動をスタートしたい」と語った。さらに「原発再稼働という私たちにとって大切な問題をみんなで決める。県知事や県議会にお任せするのではなく、自分たちで決めていく、主権者意識をもう一回もって、宮城の民主主義を育てる。その民主主義の力を結集して、県民投票を実現していこう」と運動の意義を説明して、話を締めくくった。

条例案

次に、「みんなで決める会」事務局の中嶋蓮・宮城県議(共産)が、会が作成した条例案について説明した。東京、静岡、新潟などの過去の直接請求で提起された条例案や議会での議論の内容などを研究し、「これまでのどの条例案よりも練り上げた最高水準のもの」になったという。

これまでは議会が条例案の技術的な不備を指摘して「高すぎる壁」を作ってきたが、今回の条例案はそれを許さない内容になっているという。その一例として、条例が成立したら市町村に協議を申し入れ、全ての議会で事務委任の決議がなされることを想定した条例案になっていることを挙げた。現状、都道府県と市町村は対等であり県がその事務を市町村に押し付けることはできない。過去の直接請求の条例案はこれを考慮しないものになっていると批判されたが、今回は違うというのだ。

また、投票率に関わらず必ず結果を開票する条例にした。投票の成立要件については、最低投票率を採用せず「有効投票総数の過半数の結果が、投票資格総数の4分の1以上に達したときは、知事および県議会は投票結果を尊重し」として、賛成、反対のどちらかが有権者の4分の1に達した場合に成立とする、いわゆる「絶対得票率」制度を採用した。これは東京や大阪で私たちの会 (皆で決めよう「原発」国民投票)が採用した方法と同じである。

条例案の説明ののち、署名収集時の注意点が説明された。同じ市区町村の人からでないと署名が集められないなど、直接請求の署名集めは普通の署名とは異なる点があり、それについて重点的に説明があった。署名の方法については、質疑応答でも具体的な質問が相次いだ。集会が終了してからは、参加者が市内二か所に別れて街頭宣伝活動を行い、署名活動の周知と署名収集への協力を呼び掛けた。

成功に向けて

最後に拝謁ながら、キックオフ集会に参加した個人的な感想を記しておきたい。過去の直接請求運動と比べると、既に7千人の受任者予定者がいるなど、準備は万端といえるかもしれない。ただこれは既存の組織や団体に浸透していることの証左に過ぎず、必ずしも運動の成功に向けて楽観させるものとは限らないと感じた。現在の受任者をベースにして輪を広げていくことでたとえ法定署名数を大きく上回る署名を集ることに成功したとしても、署名期間中に一般の県民の間に、大きな広がり、うねりを作り出すことができなければ、過去の「原発」住民投票の直接請求と同様に県議会で否決されてしまうことだろう。

多々良代表がこの運動の意義として何度も口にしたのは、「宮城の民主主義を育てる」という言葉だ。また、「一人でも多くの県民が原発問題を自分のこととして考える機会としていく」「当事者意識、主権者意識を掘り起こしていく」ということも何度も強調していた。また、会のWebサイトを見ると「女川原発再稼働について賛成であっても反対であっても、県民一人ひとりが当事者として話し合い、その是非を県民全体の意思で決定することは、民主主義の基本です」とあり、原発反対運動であることは全く示されていない。

「原発」県民投票を求めるこの運動を、いわゆる「反対運動」の枠を超えて、未来を自分たちで選んでいくため、自分たちで決定していくためのものとして、多くの県民に浸透させ、そして彼らを突き動かすものにできるのか。署名を集めること自体ももちろん大変な挑戦になるが、本当の挑戦はここにあるのではないかと思う。
  
*なお、<みんなで決めよう「原発」国民投票>としては、早急に「みんなで決める会」の今回の直接請求運動との関りについて方針を正式に決定し、当Webサイト上で発表する予定です。

(運営委員長・鹿野)

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