リレーメッセージ「第6回 湯川れい子(音楽評論・作詞家)」

音楽を通して常識にとらわれない、柔軟な心を大切にされてきた湯川れい子さん。
そんな湯川さんが今回、原発をどう考えるかについてメッセージを寄せて下さいました。


湯川れい子


湯川れい子
東京都目黒区生まれ。1960年、ジャズ専門誌『スウィング・ジャーナル』への投稿が認められ、ジャズ評論家としてデビュー。以来、ラジオのDJ、音楽評論、作詞、著述、ボランティア活動など多岐にわたって活躍。
音楽事務所「Office Rainbow」、ボランティア団体「RAINBOW NETWORK

 小指の先ほどの狭い地震大国に、原発など無いほうが良いに決まっている・・と、野田さんも、細野さんも、石原さん親子も、谷垣さんも、森元首相も、経団連の米倉さんも、きっと内心では考えていらっしゃるのでしょうね。

 それでも本気で、「いや、石油は高すぎるし、不安定だし、火力は温暖化に結びつくし、ウランは永久再利用できる夢のエネルギーだ。たまたま千年に一度の規模で起こった地震で被害を受けたからといって、ここで原子力を手放したら、日本の未来は無い」などと考えていらっしゃるとしたら、それは想像力の欠如どころか、完全な感性不全疾患という、人間として致命的な心の病気だと思います。


 とはいえきっと、組織の中に居ると、「明日それでエネルギーが足りなくなったら、国民は脱原発などと言っていても、大変な騒ぎになる。この経済状況の中から何兆円も出して、石油を買い続けることは不可能だ。すぐに原発ゼロなんてことにしたら、廃炉に莫大な金がかかる。人材も足りない上に、何十年も競争力を失う。将来は無くしていくにしても、今すぐに動かせる原発は動かすべきだ」という意見が、政界、経済界、そこに寄りそって生きているメディア、つまり電力関係の労働組合から日本銀行まで、日本経済を支えていると考えている人達の良識であり、常識なのかもしれません。


 だから脱原発を叫んで何万人が毎週集まっても、メディアはほとんど無視。原発直下に地盤を動かす可能性が高い断層があると解っていても、今までの安全評価基準である「活断層の真上に原子炉を立ててはならない」という文言を変えて、一部の断層については、たとえ原発の近くにあっても、直接の影響は少ないと評価する新基準を新しく作り直そう・・・なんてことを、政府はなりふりかまわずやろうとするのでしょう。


 夜も寝ないでこうこうと電気をつけて、新安全基準作りに一生懸命になっていらっしゃる保安院やお役人の方達だって、かわいい女房子供さんはいらっしゃるでしょうに、そこでまた男性社会、業界や組織の中での「良識」「常識」という手かせ足かせが、個人の感情や感性を麻痺させてしまうのでしょうね。情けないことです。


 そこで私は、もう一度、30年以上もの間、ずっと心にわだかまってきた疑問と、質問と、お願いを、改めて申し上げたいと思います。


 ①「新しい安全評価基準が出来たとして、使用済み燃料、高レベル核廃棄物がそのままプールされている原発の真下、あるいは近くで、大きな地震による亀裂が出来て、そこに原子炉そのものや、使用済み燃料などが落ちたりしたら、チャイナ・シンドロームになるのではないか。そんな心配は絶対に無い!と、誰が責任を持って保証できるのですか?それはどんな責任の持ちかたでしょうか。


 ②「日本は小さな島国で、周囲には太平洋プレートやフィリピン海プレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレートなどが縦横に走っています。日本学術会議は、どんな形で、高レベルの核廃棄物である使用済み燃料を地中や海中に埋めても、日本という土壌の条件からは、安全処理の手段は無いという答えを出しました。
 今から再稼働するまでもなく、すでに溜まり続けている使用済み燃料を、どこにどう処理するのでしょうか。それだけ危険な物の処理が出来るメドも無いのに、どうして50年間以上も、原発を増やし続けて来て、つい最近までも、まだまだ増やすつもりでいたのでしょう?それが見て見ぬふりの誤った判断だったとは、今現在の時点でも、誰も認めて反省しようとしないのはなぜなのですか?結局、何が起きても、誰も責任を取らないということでしょう。今も、そしてこれからも。


 ③「電力供給が不安定で、海外に出て行く企業があるから、原発を動かすべきだ、という主張がありますが、これは労働力のコストが安いからであって、まず取りあえずは火力、水力など、現在作られている電力を、スマートグリッドを使って必要な所に供給しながら、こんな時ほど目先の欲ではなく、自国の雇用を考えるべきでしょう。そして政府はがんばっている企業に、あらゆる優遇措置を与えて、一日も早く発電・送電を切り離し、電力自由化と、コミュニティ発電への助成をする。その結果、10年間もあれば日本は世界の安全電力供給のモデル国家になるのも夢ではないと考えています。だって現実に、今こうして電力は足りているのですから。
 もしこれでもう一か所だけでも、福島レベルの原発事故が福井や静岡あたりで起きたら、企業の海外脱出を心配するどころの話ではなく、日本全体が生きていけなくなる。今こそ、その恐ろしい可能性に目を向けるべきではありませんか?


 ④「最後に、本当に国の安全を考えたら、この小さな島に54基の原発。海から空から狙われて攻撃されたら、日本は即沈没、大汚染です。どうやって自衛できるのか、石原さん、石破さん、安倍晋三さん、森本敏さん、櫻井よし子さん、どうぞこの心配性な私や、未来の子供たちに教えてください。憲法九条を変えて、自衛隊を軍隊にして、アメリカからオスプレイやらミサイルやら、莫大なお金で武器を買って防衛したところで、四方を海に囲まれている小さな国では、守りようも防ぎようもありません。もっともっと外交力とビジネスでの協力体勢を作り、原発から爆発する燃料を一日も早く抜き取って、廃炉にするしか無いのではないでしょうか。間違っていたら、どうぞバカな私にも解るように教えてください」



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