ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第2回) by しばけん

「どのように原発国民投票が行われることになったのか?」

1月19日の新聞「キャピタル(首都)」の一面「彼らの国民投票」 彼らとは政党のことである。

1月19日の新聞「キャピタル(首都)」の一面「彼らの国民投票」
彼らとは政党のことである。

国民投票は国民が大事なことを決める手段であるが、それと同時に今回のブルガリアの国民投票は政党間の政権争いに使われているのではないかと、ブルガリアの政治評論家は言う。それはどういうことなのだろうか。

ブルガリアの国会議員は240人で任期は4年の一院制である。2009年に行われた選挙で政権与党となった「ブルガリアの欧州における発展のための市民(GERB)」が117議席を占めている。前政権で現最大野党の「ブルガリアのための連合(BSP他)」40議席。「権利と自由のための運動(MRF)」35議席と続く。ブルガリアにも「緑の党」があり2005年には連立与党となったが、現在は議席を持っていない。

さて前回のレポートで少し触れたが、前政権で現野党のBSPは、ベレネでの新規原子力発電所政策を、ロシアの協力を得て推進してきた。しかし、去年3月に現政権与党のGERBの首相ボイコボリソフは、「費用がかかりすぎる」「法的な不備がある」としてベレネ原発の中止を決めた。GERBは現在あるコズロデュイ原発の計画を進めたいのだ。しかし、前政権のBSPは「ベレネ原発計画中止」を撤回させるために、国民投票を行うための請願署名を集め始めた。50万人(人口の6.7%)の署名が集まれば、議会での承認を経て、国民投票成立となる。

今回の野党BSPの国民投票を求める署名は、50万人を大きく上回り最終的には77万人(人口の10.3%)分が集まり、与党GERBもその請願を受け、議会で賛成多数で可決した。また、建設計画に携わった原発輸出企業アトムストロイエクスポート(ロシアの国有会社ロスアトムの傘下)がベレネ原発建設の中止を受けて10億ユーロ(約1000億円)の損害賠償を求めて法的措置に訴える方針を示したことも、GERBが請願を受けて、原発推進に回ったきっかけになっている。

与党GERBは、総選挙と同時に国民投票をやりたいと思っていたようだ。理由は2つ。一つは総選挙と同時に行うことによる予算の削減。もう一つは総選挙前に、原発の道筋が立ってしまうのを避けたいという理由だ。しかし、野党BSPが早期実現を促し、こうして、総選挙と同時ではなく1月27日に単独で国民投票が行われることが、去年の10月24日に決まったのだ。ちなみに4年に1度の総選挙は今年の7月に行われる。

野党BSPはベレネ原発の再検討を目指し、国民投票の設問を「ベレネ原発で原子力発電を発展させますか」と提案したが、与党GERBは「新しい原発で原子力利用を発展させますか」とベレネ原発に限らない形で国民に信を問うことにし、野党BSPを牽制した。しかし、どちらの党も原発には意欲的だ。与党GERBも原発の利用を継続しようとしている。2011年には東芝子会社の米原子力大手ウェスチングハウス・エレクトリックと協力を約束するなど米国への接近を図っている。昨年3月のベレネ原発中止決定は「前政権の計画は認められない」という意味にすぎなかったようだ。

「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」
投票日は1月27日。即日開票される。

次回は「首相、突然YesからNoへ。」

参考
東京新聞
外務省HP
Sofia News Agency 他


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プロフィール
大芝健太郎 しばけん
26歳 フリーライター
「原発」国民投票賛同人
「原発」国民投票 調査団のメンバーとして
リトアニア国民投票も現地取材

月刊「社会運動」連載中
雑誌「NOU LIFE STYLE」他

Blog: http://shibaken612.blogspot.com
Twitter: https://twitter.com/shibaken612

2013年1月23日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:海外情報

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