ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第6回) by しばけん

普通のレストランのガラス窓に貼られる投票場所

普通のレストランのガラス窓に貼られる投票場所

2013年1月27日。首都ソフィアの天気は曇り時々晴れ。昨日降った雪で少し滑りやすいことを除けば、寒すぎることもなく、投票日和である。投票時間は朝の6時から夜の19時まで。町の掲示板や、インターネットで自分の投票する場所をチェックして投票に出向く。投票所は小学校が主だが、大学の施設なども使われていた。投票所の入口には自分の投票する部屋が張り出されている。この番地の人は理科室、あの番地の人は社会科室…などといった具合だ。足が悪い人の投票する部屋が3階で、小学校にはエレベーターがないなんてこともあり、苦労して階段を登っている人もいた。もっとも車椅子マークの部屋も入り口から近いところにあったので、事前に申請すれば、その部屋で投票できるのだろう。

投票所になっているソフィアの小学校

投票所になっているソフィアの小学校

各部屋の中には、4人くらいの管理者がいる。投票者は部屋に入ってまず、管理者に身分証明書を見せ、選挙人名簿に載っているのを確認してもらい、投票用紙と投票用紙をいれる封筒を受け取る。それらを持って部屋の隅にある薄くて白い布で仕切られた個室に入り、その中で投票用紙に記入して、封筒に入れる。そして封筒ごと、透明な投票箱の中にいれる。投票したら最後に選挙人名簿にサインをしてすべて終了だ。日本のように箱を不透明にすれば、封筒に入れたり、出したりする手間が省けるはずだが、投票する前から投票箱に票が入っているということなど、不正を防ぐためだろう。

投票用紙のサンプル 「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」

投票用紙のサンプル
「新しい原発で原子力利用を発展させますか?」

18時時点の投票率は20.3%。出口調査では6割が賛成。反対は4割だった。
そして19時きっかりに投票は締め切られ、すぐに開票作業が開始された。

最終的な投票人数は140万人。投票率にして21.8%。有効投票のうち61%が新規原発の建設に賛成、反対が39%。つまり国民投票で賛成派が過半数を占めるということが明らかになった。

投票の様子

投票の様子

本来であれば国民投票の結果を受けて「新規原発建設」という方向に政府は舵を取るべきだ。しかし拘束力を持つための434万人には程遠い140万人という数字に終わった。ブルガリア政府は新規原発の建設に関して「20%超の投票率で過半数を超える賛成意見として国会の議論にあげる」ということに留らせる。投票率の低さにより、国民投票を経てもなお、結局の方向性は国会に預けられる形になった。そしてこの投票率の低さから、各政党、個人が自分の都合の良いように解釈していく。

次回は「国民投票の結果をどう解釈するか」


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プロフィール
大芝健太郎 しばけん
26歳 フリーライター
「原発」国民投票賛同人
「原発」国民投票 調査団のメンバーとして
リトアニア国民投票も現地取材

月刊「社会運動」連載中
雑誌「NOU LIFE STYLE」他

Blog: http://shibaken612.blogspot.com
Twitter: https://twitter.com/shibaken612

2013年1月28日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:海外情報

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