「【提言】最低でも30キロ圏内の自治体で『原発』住民投票の実施を」の解説

*以下は、【提言】最低でも30キロ圏内の自治体で『原発』住民投票の実施をに対する、解説です。

私たちは一貫して、原発の是非について国民投票を実施すべきだと訴えています。しかし残念ながら認めなければならない現実として、「原発」国民投票の実施を求める私たちの活動が直ぐに実を結ぶという保証はありません。一方、原発再稼働の是非は、緊急性を要する問題です。そのため、「原発」国民投票の実施を目指すことと並行して、防災計画の策定が義務付けられている原発立地30キロ圏内の自治体で「原発」住民投票を実施することを提案します。

「地元の同意」から考える

九州電力は、川内原発1、2号機を8月中に再稼動することを目指しています。この前提となったのが、(1)原子力規制員会による適合性審査の合格、(2)地方防災計画の策定、(3)地元の同意の3点です。このうち「地元の同意」は、2014年11月7日に成立したとされています。また、関西電力高浜原発3、4号機と四国電力伊方原発3号機については、今後再稼動に向けて「地元の同意」が一つの焦点になると考えられます。

しかしこの「地元の同意」とは、いったい何を意味するのでしょうか?私たちは、福島第一原発の事故の経験を受けて、「地元の同意」の定義について根本的な見直しがなされてしかるべきものと考えています。ここでは、「地元の同意」を論点の中心に据え、原発再稼働のためには「原発」国民投票、また最低でも30キロ圏内での「原発」住民投票が必要なことを訴えます。

「地元の範囲」とは?

「地元の同意」を考えるとき、ポイントは二つあります。一点目は、「地元の範囲」をどう考えるかであり、二点目は「同意の主体」をどう考えるかです。

まずは、「地元の範囲」について考えてみます。電力会社が再稼働の同意を求める原発の「地元」とはどこまでの範囲を指すのか―これについては法的な定めが無く、幾つかの見解が存在しています。また日本政府は、地元の範囲について明言していません。ここでは、「地元の範囲」についての主な意見を3つ紹介します。(意見はこの3つに限られるわけではなく、私たちが統一地方選時に実施したアンケートでも「50キロ圏内」「250キロ圏内」で住民投票を行うべきという考えが寄せられています)

一つ目は、「地元の範囲」を最も狭く捉えるもので、「立地都道府県および立地基礎自治体」を「地元」とする考えです。従来原発事業者は、立地都道府県と立地基礎自治体の2者と安全協定を結んでおり、原発再稼働の前にはこの2者の同意を求めています。これは紳士協定に過ぎず法的な根拠を持つものではありませんが、1969年に福島県と東京電力が締結して以来、全国に広まりました。九州電力川内原発1、2号機の場合も、立地都道府県である鹿児島県と立地基礎自治体である薩摩川内市の2者が「地元」と見なされ、2014年11月、「同意」が成立したものとされました。

二つ目は、「原発の半径30キロ圏内の周辺自治体」も「地元の範囲」に含まれるという考えです。この考えは、たとえば社民党が繰り返し主張しており、2014年10月16日の参議院総務委員会では又市征治議員が「原発事故に際しての避難計画を義務付けている原発から三十キロ圏内に位置する自治体の同意は不可欠だ、当然のことじゃないか」と発言しています。危険な区域だからこそ避難計画の策定が義務付けられているのだから、「地元の範囲」に含まれないのは不当だという主張には、説得力があります。

三つ目は、「原発の地元は全国」とする考えです。2012年4月2日の参議院予算委員会で、当時経済産業大臣だった枝野幸男氏は社民党の福島瑞穂氏に地元の範囲を聞かれ「あえて聞かれれば、日本中地元」と答えています。その理由としては、福島の事故の影響などを考えても原発からの距離で線引きをすることが難しい性質の問題であることを挙げました。

「同意の主体」とは?

次に、「同意の主体」について考えてみましょう。同意の主体については、大まかに二つの意見があります。まず一つ目は、地元の「首長と議会」が同意主体であるとする考えで、たとえば川内原発のときも、鹿児島県と薩摩川内市の2自治体の首長と議会が同意の主体となりました。今後もこれがモデルとなっていくと考えられています。二つ目の意見は、選挙で選ばれた首長や議会ではなく、「住民・国民」が直接的に同意の主体となるべきというものです。

地元は全国で、同意の主体は国民
         ~だから「原発」国民投票が必要

私たちの会としては、「地元の範囲」については、「地元は全国」論に原則的に賛成します。理由は、事故の影響が立地自治体や周辺自治体を超えて、全国的な影響を持つからです。まず、福島第一原発で発生した事故の結果、放射能汚染の影響が既に全国的に観測されています。また、菅総理をはじめとした官邸スタッフが現実的なシナリオとして想定していただけでなく、福島第一原発の責任者であった吉田昌郎所長までもが「首都圏壊滅」の事態を覚悟していたことが、公開された調書から明らかになっています。この「首都圏壊滅」という事態が本当に発生していれば、3000万人以上の避難が想定され、過酷な汚染が全国に及ぶことは確実でした。

また「同意の主体」については、「住民・国民」であるべきと考えます。原発再稼働は、国における憲法改正と同じように、民意を正確に反映させることが不可欠な重大な課題です。しかし、議員や首長を選ぶ選挙では、原発以外の重要な課題も争点となる上に、候補者が原発の争点化を避けることも珍しくありません。そのため、選挙では原発の是非について民意を正確に諮ることができません。その結果、選挙で選ばれた議員や首長が原発再稼働の同意について、民意を正確に代表する意見を表明することは担保されません。同意の主体は「住民・国民」であるべきで、首長や議員による同意では不十分です。

「地元は全国」であり、かつ「住民・国民」が同意主体であるという二つの考えから、私たちは「原発」国民投票を実施して、全国民の意見を聞くことが不可欠だと考えます。この場合、再稼働の条件は「原発」国民投票の結果、「再稼働賛成の意見」が過半数を超えることとなります。

個別の原発の是非については住民投票を

ただし、個別の原発の再稼働について逐一「原発」国民投票を実施するのは、そのコストや労力を考えたときに現実的ではありません。また影響が全国に及ぶとはいえ、原発に近ければ近いほどリスクが大きいのも事実です。そのため、同意の主体を「住民・国民」としつつも、地元の範囲については「地元は全国」論と「30キロ圏内」論をミックスさせて事を進めていくべきだと考えます。具体的には、「日本における原発の是非」という大方針については「地元は全国」論の考えを採用して「原発」国民投票で決定し、個別の原発の再稼働については「30キロ圏内」論の考えに基づき住民投票を実施するべきだと考えます。

私たちはここで、30キロ圏内での住民投票を呼びかけますが、30キロ圏外での住民投票を否定するものではありません。私たちの会自身も、2011年から2012年にかけて、東京都と大阪市で「原発」住民投票の実現を目指して、直接請求運動を展開しました。2014年から2015年にかけては、埼玉県での「原発」住民投票を求める直接請求運動を応援しました。30キロ圏内での実施は、避難計画が必要でその危険性が公に認められていることから、「最低でも」必要と考えるところです。原発の是非という問題について、30キロ圏内に限らず、各地の市民が自分のこととして考え、住民投票を求めることを呼びかけます。

みんなで決めよう「原発」国民投票
運営委員長・鹿野隆行

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