国民投票について

Q2−1 日本で国民投票は実現できるのですか。

A.できます。「原発」国民投票を実施するための手続き法を作れば、日本でも実施できます。

ただし、投票結果が国会を縛るかたち、つまり法的拘束力をもった国民投票を行うことはできません。できるのは、立法府や行政府が主権者である国民の意思を確認して、国民の意思を尊重して政治や行政に反映する「諮問型」の国民投票のみです。

参考:「『原発国民投票』は日本で行えるのか?」マガジン9掲載の今井一氏(ジャーナリスト)へのインタビュー

Q2-2 日本で今まで国民投票が実施されたことはありますか。

ありません。

ただ、地方自治体レベルでは、独自に条例を作って原発建設や米軍基地移転、可動堰建設など重要な事柄について直接、住民の意見を聞く「住民投票」が多数行われています。

原発に関しては、建設の是非について新潟県巻町(96年)と三重県海山町(2001年)で、プルサーマル計画の是非について新潟県刈羽村(01年)で住民投票が実施されています。

Q2-3 海外での国民投票の事例はありますか。

A.数多くあります。

世界には、国民投票で直接、法律の制定や改正、廃止ができる国があります。有権者の一定数の署名を集めれば、国民投票が行われるという仕組みです。また、国民投票で直接の決定はできなくても、国民の意思を確認するために政府・国会が実施する国もあります。

原発をめぐる国民投票は、スイス(1957年、79年2月、同5月、84年、90年、2003年)、オーストリア(78年)、スウェーデン(80年)、イタリア(87年、2011年)、リトアニア(2008年、2012年)、ブルガリア(2013年)で行われています。2011年のイタリア国民投票では、原子力政策について「原発再開法を廃止する」ことの賛否を問い、賛成が94%を占めました。その結果、この法律の廃止が決定されました。

Q2-4 脱原発か、原発推進かを争点にした国政選挙ではいけないのですか。

A.選挙と国民投票は異質のものです。

「原発」をどうするのかを自分たちに代わって決める「人」を選ぶのが選挙。国民投票では、自分達が直接、「原発」をどうするのか、意見を示します。

選挙で政党や政治家は公約を掲げますが、国政にまつわる事柄は社会保障や景気対策などたくさんあります。公約を実行できる力があるのかなど政治家への人物評価も加わります。1つの政党が「原発」が争点だと言ったとしても、ほかの政党は別の問題を公約の中心に据えるかもしれません。国民がみんな「原発」の公約を基に判断するとも限りません。

「原発」国民投票では、「原発」を今後どうするのかについての大きな方向性を国民が判断します。その意思に沿って、国民が選んだ議員が法律を作ったり、行政を運営したりするのです。

Q2-5 強制力がない「諮問型」国民投票だと、投票の結果が無視されかねないのではないですか。

A.なぜ投票結果が国会を縛る法的拘束力をもった国民投票ではないのかというと、日本国憲法が「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」(41条)と定めているためです。そのため、憲法が「国民投票で決める」と規定する憲法改正以外の事柄では、国民投票の結果に法的拘束力を持たせることはできません。

投票結果の実効性についてですが、憲法は「国政は、国民の厳粛な信託によるもの」としており、政府や国会は、国民投票で示された主権者の意思を無視したり、反故にしたりはできません。もちろん、投票結果を尊重するよう、国民が立法府や行政府に強く働きかけていくことも必要です。

原子力政策をめぐる「諮問型国民投票」はスウェーデンで1980年に議会と政府が呼びかけて実施されています。その時には投票前に政党間で「投票結果を最大限尊重する」と申し合わせをしていました。日本でも同じように、閣議決定や国会決議で「結果を尊重する」などと取り決めることが考えられます。

Q2-6 正しい情報が行き渡らないなかで国民が判断し、原発賛否のいずれかの方向を決めてしまうことにはなりませんか。

A.「脱原発」派の方々には、「国や電力会社が情報操作しているなかでは、原発の危険性が十分に理解されておらず、現状追認の原発推進の結果が出るのではないか」、「原発推進」派には、「福島第一原発の事故で不安が煽られているなかでは、原発の必要性が十分に理解されず、一時の感情だけで脱原発の結果が出るのではないか」というそれぞれの理由から、国民投票に反対する声があります。

でも、今のまま、政治家が決めるとして、正しい情報を基に正しい判断ができるといえるでしょうか。情報操作があるというなら、国民全員を情報操作するのと、政治家を情報操作するのとどちらが容易でしょうか。国民の不安が煽られていて一時の感情だけで決まるというなら、政治家も選挙の票を考えて、そのような国民の声を反映するでしょう。政治家を介した判断と、自分たち一人ひとりが判断した結果と、どちらならより受け入れることができるでしょうか。そして、国民投票で皆が決定権を持つことで、国民の関心は高まり、真剣に考え始めます。そのことにより、現状よりもさまざまな情報が提供され、情報が精査される機会が生まれます。そのことは国内で過去3回、原発に関する住民投票を実施した経緯からも明らかです。


2014年5月24日