秘密保護法案は廃案とし、出直すべき(当会運営委員長)
10月25日、特定秘密保護法案が国会に提出されました。これに関して、当会の運営委員長の文章を、ここに紹介いたします。
国民の判断力
私は「原発」国民投票の実施を強く訴えていますが、これは、「適切な情報の提供が成されれば、そして自らの意思決定が結果に影響を与えることが分かり関心を持てば、国民は総体として、おおむね適切な判断を下す」という政治的な信念に基づいています。
「おおむね」としているのは、国民が「必ず」正しい判断を下すとは限らないからです。ただし、これは政治家や官僚、学者などの専門家でも同じことです。3.11前、日本政府は原発依存を大幅に増やす計画を立てていましたが、これに妥当性がないことは現在では多くの人々が認めるところでしょう。
原発の是非について価値判断をするにあたっては、選挙の支持母体や管轄領域、研究母体などのバイアスを持たない分、国民一人一人は政治家や官僚、学者よりも、より総合的に考え、適切な判断を下す潜在性が高いと考えます。
この一般の人々、国民の「適切な判断」の前提条件として、「適切な情報の提供」があります。「原発」国民投票を実施するにあたっては、価値判断を下す材料として、政府や電力会社、政治家や学者などから、安全性やコストなどについて、様々な情報や見解が提供される必要があります。
特定秘密保護法案の問題点
10月25日、政府は特定秘密保護法案を国会に提出しました。安全保障についての情報を米国と共有するためにこの法案が求められていることは分かります。しかし、この法案には以下のような重要な欠陥があると考えます。
- 特定秘密の対象分野は「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロの防止」の4つとなっているが、それぞれの該当事項の定義があいまいで、政府・官僚によって、恣意的に拡大解釈される恐れがある
- 特定秘密の指定を大臣などの行政の長が行うが、その指定の判断の是非について、チェック機能が事前、事後ともに全く働かない
- 原則5年以内に秘密指定の解除か更新が必要だが、何度でも更新可能で、内閣の承認さえあれば30年を超えて永久に秘密にすることも可能
- 「報道・取材の自由」への配慮が明記されたが、「法令違反」だけでなく、「著しく不当な方法」による情報取得も「正当な業務」外と見なされ、報道の自由への制約が懸念される
総じて、政府の恣意的な運用を防止し、チェックする仕組みが存在しておらず、その点が懸念される内容となっています。原発についての情報も、たとえば「テロの防止」に関連すると判断され特定秘密に指定された場合、国民がその指定の事実を知る術はなく、政府によって永遠に秘密にされることさえ可能となっています。また、その是非を裁判所や第三者機関がチェックすることもできません。
また法案の内容だけでなく、プロセスの観点からも、パブリックコメントの結果が完全に無視されているのは問題です。77%が反対意見を付したのですから、そのことについて一定の考慮・配慮がなされなければならないでしょう。
国民を信頼し、新しい民主主義のページを
3.11の未曾有の大災害を経験した私たち日本人は、これから未来に向けて、新しい時代を築いていかなければなりません。「原発」国民投票もその礎の一つになると信じるところですが、これには、新しい民主主義のページを開くことが肝要です。
いま日本政府に、そして日本の国会議員に求められているのは、新しい民主主義のページを開くために、国民を統治の対象として考えるだけではなく、主権者としての国民をもっと信頼することです。そしてこれまで以上に情報を提供して、選挙権だけでなく、政治的な決定権をさらに与えていくことです。
特定秘密保護法案は廃案とし、出直すべき
様々な欠陥を持つ特定秘密保護法案は、今国会で廃案とされるべきです。そして、「国民を信頼し、情報を公開する」という基本原則に基づいて、情報の公開および情報の秘匿について、総合的にゼロから考え直す必要があると考えます。政府の恣意性への考慮が全く欠けている今回の法案からは、「政府への揺るぎない信頼」は伝わってきますが、一方「国民への信頼」は全く感じられません。
いや、もう一つ条件を付けましょう。秘密保護について考える前に、メルトダウンの事実がなぜ隠されたのか、SPEEDIの情報がなぜ適切に活用されなかったのか、私たちは、そして政府や国会は、真剣に反省し、検証する必要があるでしょう。情報提供について「落第」した政府が、補講・追試も受けないで、情報秘匿を強化しようとは、噴飯ものではないでしょうか。
みんなで決めよう「原発」国民投票
運営委員長・鹿野隆行
2013年10月27日 | コメント/トラックバック(3) |
カテゴリー:ニュース 事務局からのお知らせ
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コメント
運営委員長のメッセージの通りです 廃案にすべきです そのためにはより多くの人たちが声を上げなければなりません
日本には真の民主主義が根付いているとは残念ながら思えない現状で、これを後退させ戦前への逆戻りを思い起こさせる特定秘密保護法案には反対です。
情報は本来、我々国民すべてのもの。この法案は、慎重に審議されて出てきたものとは到底思えず、廃案にすべきものです。